清水真人『首相の蹉跌ーーポスト小泉 権力の黄昏』

首相の蹉跌―ポスト小泉 権力の黄昏

首相の蹉跌―ポスト小泉 権力の黄昏

 小泉政権を継いだ安倍、福田両氏がなぜ1年で首相の座を投げ出すことになったかをレポートした本。2009年の出版で、安倍元首相が自民党総裁に返り咲いたので、読んでみたが、面白かった。権力を小泉首相ほど知っていた政治家はいなかったし、総裁選をガチンコで戦い、総選挙で自らの地位を盤石にするという闘争を経験しなかった安倍、福田両氏はいくら間近で小泉首相を見ていても、権力の使い方も恐ろしさも知らなかったという感じがしてしまう。
 この本は、安倍、福田両政権の分析で終わるが、政権投げ出しに至る過程はどの政権でもかわらず、その後の麻生、民主党になってからの鳩山、菅、野田に至るまで、この本が描き出したパターンは変わらない気がする。党内における財政再建派と上げ潮(成長)重視派の闘争、支持率が下がると「官邸主導」の体裁をつくるために首相補佐官をやたらと置いたり、官僚たたきに出たりするのも、安倍政権から始まったのだなあ、という思いを新たにする。そして、仲間を集めた「お友達内閣」であったり、反対に、党内のバランスで閣僚人事を決めた結果、閣外の人間に頼ったり...。
 安倍首相の政権投げ出しは直接的には病気だが、その前から内閣は迷走、死に体状態だったんだなあ。この本で描かれたような過去をどのように教訓として新たに総裁として自民党を率いていくのだろうか(そして、総選挙に勝ったときには再度、首相として)。そのあたりが興味あるところです。他者に失敗を求めず、自らの失敗をどう認識し、どう考えているのか、だなあ。「党内、官僚の陰謀にやられた」「健康のせいだ」と考えているだけだったら...。次も厳しいだろうなあ。
 で、目次で内容を見ていくと...

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クリス・アンダーソンの最新作「MAKERS」が待ち遠しい

 最近、邦訳を心待ちにしているのは、この本。

MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

ビーイング・デジタル - ビットの時代 新装版 「ロングテール」「フリーミアム」など新たなビジネス・キーワードを生み出してきたクリス・アンダーソンの最新作、「MAKERS」。副題に「21世紀の産業革命が始まる(原著の英語では、The New Industrial Revolution)」とある。インターネットに代表されるデジタル情報革命は、アトムからビットへの津波を生み出すといわれたが、デジタル化の果てに起きたのはビットからアトムへの逆流で、今度は製造業そのものを変貌させてしまうような革命が起きているということなのだろうか。英語のほうの紹介を見ていたら、「desktop manufacturing」とか、「3D printing」とか、「crowdfunding」とかいった言葉が乱舞している。また新しいキーワードが提示されていそうだなあ。
インクジェット時代がきた! 液晶テレビも骨も作れる驚異の技術 (光文社新書) 「3Dプリンター」のインパクトについては、『インクジェット時代がきた!』に関する小飼弾氏のブログの書評で知って、「すごいものができてきたんだな」と思ったものだが、こうした技術革新を含め、いまDTP(desktop publishing)革命ならぬDTM(desktop manufacturing)革命が起きているというわけで、その全体像を展望しようとしているのだろうか。どんなことが書かているのか、楽しみだなあ。
 コンピューターの世界では、DTPはダウンサイジングの象徴のひとつでもあった。今度は製造業の世界で、ダウンサイジングが起きるということなのだろうか。パナソニックソニー、シャープなど苦境になる日本の電機産業も、今度は、この新産業革命津波に襲われることになるのだろうか。本当は原著を読めばいいんだろうが、やっぱり日本語で読むほうが簡単だから、出版が待ち遠しいなあ。
 で、出版に合わせたのか、クリス・アンダーソンの来日講演も企画されている様子。
★404 Blog Not Found:文字通り、型無し - 書評 - インクジェット時代がきた! => http://bit.ly/Rzm5l4
★WIRED CONFERENCE 2012: “メイカームーヴメント”とは何か? クリス・アンダーソンの新提言 « WIRED.jp => http://bit.ly/VfgVeu
ロングテール(アップデート版)―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略 (ハヤカワ新書juice) フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略