Shall We ダンス?

Shall We ダンス? (通常版) [DVD]

Shall We ダンス? (通常版) [DVD]

 周防正行監督の映画をCATVで放映していて再見。米国リメイク版とは比べものにならないことを改めて知る。人物描写の繊細さ、生活感、人生観など、すべての面で、原作の周防監督版のほうが深い。米国版は結局のところ、表面的な面白さをなぞっただけで、それが薄っぺらな印象を与えることになっているのだろう。マーケティング感覚だけで創ってしまった悲劇だろう。観客に受ける「面白さ」ばかりを計算して、かえって面白くなくなってしまった。日米の人生観の問題もあるのだろうが、一通り会社人生で「成功」といわれるものを手に入れても満たされない感じを役所広司のほうが繊細に、上手に演じている。草刈民代にしても、高慢、傲慢さが消えていくわけだが、そのあたり、「おれが、おれが…」の米国社会ではもう一つ理解されにくいのだろうか。ともあれ、役所広司草刈民代がいいのだが、それがリチャード・ギアジェニファー・ロペスに翻訳されていない。ともあれ、人生に関する本質的な部分は全て切り捨てて、単純な娯楽映画にしようとしたところが米国版の失敗の原因であることが、周防監督版の原作を見ていると、よくわかる。