チャロー!インディア(森美術館)

 「インド美術の新時代」というサブタイトルが付いているように、インドの現代美術を盛りだくさんに紹介する。これが意外と面白かった。現代と近代、宗教的世界と物質的世界、先端と土着風土、さまざまな相対する要素が交錯する国。ヒンズー的世界の一方で、核兵器保有国であり、ユニオン・カーバイドのボパール工場化学事故など世界最悪の環境公害事件に見舞われた国。BRICsの一つとして高度成長を遂げる一方で、文明の栄光と悲惨が同居する国。現代美術には、そうした風土や歴史や現実が繁栄する。それが刺激的で面白かった。横尾忠則的世界が炸裂している感じも。グラフィック・ノベル的な作品も展示されており、コミックがひとつの表現手段となっているのも興味深い。アーティストは知らない人ばかり。また作品の背景となっているインドの歴史や文化についても知らないことが多い。これをきっかけにインドの現代美術について勉強したいと思った。
 で、印象に残った作家は、ジティッシュ・カッラト(Jitish Kallat)の「オートザウルス・トリポウス」(骨でつくったオート三輪車)とパノラマ風の「アーティスト、ただいま市内電話中」、クリシュナラージ・チョナト(Krishnaraj Chonat)の「小舟」、アトゥール・ドディヤ(Atul Dodiya)の「結婚の光景」、トゥシャール・ジョーグ(Tushar Jorg)の「ユニセル」シリーズ、バールティ・ケール(Bharti Kher)の「その皮膚は己の言語ではない言葉を語る」(象のオブジェ)、プラバヴァディ・メッパイル(Prabhavathi Meppayil)の絵画(遠くから見ると、真っ白なキャンパスなんだが、近づくと絵が見える=浮かび上がる)、プシュパマラ・Nの「先住民の類型」シリーズ、サルナート・バナルジー(Sarnath Banerjee)の「大佐の脳みそ」、アシム・プルカヤスタ(Ashim Purkayastha)の「ガンディー、眼鏡なしの男」シリーズ(切手や紙幣のガンジーを加工したもので、インドの赤瀬川源平といった風)、ナタラージ・シャルマ(Nataraj Sharma)の「エアー・ショー」(戦闘機の航跡を描いたオブジェ)、ヴィヴァン・スンダラム(Vivan Sundaram)の廃棄物を題材にした作品。このほかにも、まだまだ刺激的な作品があった。こうして書き連ねていくと、混沌とした都市が創造の主題となっているなあ。マンダラ風の作品もあった。
【参考】
オフィシャルサイト
 http://www.mori.art.museum/contents/india/