パリ、ジュテーム

 パリ20区のうち18区を舞台に世界の映像作家が18編の短編映画をつくったオムニバス映画。それぞれの監督の特徴が出ていて面白いし、俳優陣も豪華。フランス勢は、ジュリエット・ビノシュジェラール・ドパルデューファニー・アルダンリュディヴィーヌ・サニエが出てくるし、海外勢では、イライジャ・ウッドをはじめ、ジーナ・ローランズ、ベン・ギャザラ、ボブ・ホスキンスなどといった渋い役者も出ている。10分の映画だから、かえって、これだけのスタッフ、キャストを集めることができるのかもしれない。基本的には愛がテーマだが、パリは様々な人種が集まった国際都市であり、その明も暗も描かれる。冒頭の一遍は、パリの駐車事情から始まる。あの密集した路上駐車は壮観なのだが、だれが見ても、不思議なんだなと改めて思う。地下鉄の音楽演奏にしてもしかり。
 個人的に好きなのは、イスラムの少女への愛の始まりを描いた「セーヌ河岸」。スティーブ・ブシェミ主演、コーエン兄弟監督で地下鉄を舞台にしたコメディ「チュイルリー」。自分の子供を預けて市内高級住宅街で働く移民の家政婦を描いた「16区から遠く離れて」。妻が病に倒れ、愛が蘇る「バスティーユ」。ニック・ノルティリュディヴィーヌ・サニエ主演で、落ちがつく「モンソー公園」。ナタリー・ポートマン主演で、1本の電話をきっかけに走馬灯のように愛の記憶が駆け巡る「フォブール・サン・ドニ」(監督は、トム・ティクヴァ。瑞々しい映像感覚だと思ったら、「ローラ・ラン・ローラ」の監督だった)。