榎本泰子「上海」
- 作者: 榎本泰子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/11/26
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 65回
- この商品を含むブログ (29件) を見る
しかし、一方で、市場経済化が進み、上海がニューヨーク、ロンドンとともに世界経済のひとつの極となっていくに連れて、上海は中国から遊離していくのだろうか。上海の歴史を読んでいくと、そうした思いにも駆られる。戦前の上海は、中国であって中国でなかったし、農村から生まれた中華人民共和国は、文化大革命の時代が象徴するように、上海の都市的要素・コスモポリタン的資質を嫌い、破壊してきたようにもみえる。
と、もうひとつ読んでいて、改めて知ったのは、ジャーディン・マセソン商会も、香港上海銀行も、サッスーン商会も、上海で生まれたグローバル財閥はいずれもアヘン取引で財をなしたこと。確かに時代を考えれば、それは何の不思議もないのだが、そうした歴史を持った企業だったのだなあ。急激に資本を蓄積することができた企業というのは、どこかに怪しさが漂うのかも。原始的資本蓄積かしら。