村木厚労省局長事件で検事が資料改竄ーー朝日の大スクープ

郵便割引制度をめぐる偽の証明書発行事件で、大阪地検特捜部が証拠品として押収したフロッピーディスク(FD)が改ざんされた疑いがあることが朝日新聞の取材でわかった。取材を受けた地検側が事件の捜査現場を指揮した主任検事(43)から事情を聴いたところ、「誤って書き換えてしまった」と説明したという。しかし、検察関係者は取材に対し「主任検事が一部同僚に『捜査の見立てに合うようにデータを変えた』と話した」としている。検察当局は21日以降、本格調査に乗り出す。

 久しぶりに新聞が放ったスクープらしいスクープ。朝日新聞が今日の朝刊で、先日、無罪判決が出た村木厚労省局長をめぐる郵便制度の不正利用事件で、検事が押収資料を改ざんしていたという大スクープ。この事件では、検察側が当初の見立て(シナリオ)に固執した捜査で、村木局長を逮捕したものの、大阪地裁は検察側の調書を証拠として採用せず、無罪判決が出ている。どれだけ強引な捜査だったか。それも法の限度を越えた捜査だったかが露呈した形。当然、今日は朝から大騒ぎ。

郵便不正事件で主任検事が証拠として押収したフロッピーディスク(FD)を改ざんした疑惑をめぐり、最高検の伊藤鉄男次長検事は21日午前11時から緊急の記者会見を開き、「報道を素直に見れば、何らかの犯罪になる疑いが濃い。もはや捜査せざるを得ない」と述べた。最高検刑事部の検事らを21日に大阪に派遣し、証拠隠滅容疑で捜査を始めたという。最高検が自ら捜査に乗り出すのは極めて異例だ。伊藤次長は、改ざんした疑いのある主任検事を逮捕する可能性については明言を避けたが「ありとあらゆる事実解明をする。何ら特別扱いはしない」と語気を強めた。

 最高検も動き出した。朝日を追いかける新聞社は、主任検事の名前や経歴も出して報道している。で、村木元局長は...。

郵便不正事件で被告となった厚生労働省村木厚子元局長(54)は21日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した。「こんなことまであり得るのかと恐ろしい気持ちがした」と語ったうえで、「一部に変な人がいたんだという話にせず、事件全体について何があって、なぜこうなったのか検証してもらい、検察のあり方に生かしてほしい」と、検察に事件全体の検証を求めた。

 検察の自浄能力が問われることになりそう。やはり取り調べの可視化の議論が本格的に起きてくるんだろう。合わせて、司法取引とか、検察側にも真相解明の新たなツールが必要になってくるのだろう。
 しかし、こうした調査報道こそメディアに期待されているもの。朝日はご立派でした。これだけのネタを抜かれた競争相手のメディアの人たちは大変だろうな。
【追記】
 夜になって事態はさらに進展。主任検事が逮捕される。朝日によると,以下のとおり。

郵便割引制度を悪用した偽の証明書発行事件をめぐり、押収品のフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんしたとして、最高検は21日夜、大阪地検特捜部でこの事件の主任を務めた前田恒彦検事(43)を、証拠隠滅の容疑で逮捕した。
 朝日新聞が21日朝刊で疑惑を報じたことから、最高検が捜査に乗り出していた。

 2段落目がちょっと自慢気。でも、自慢したくのも無理はない完璧なスクープでした。しかし、今後、検察がどのように村木局長事件の検証を行っていくか、それが問題だろうなあ。
 そして村木局長の裁判は...

大阪地検の大島忠郁・次席検事は21日夜、緊急記者会見し、冒頭、村木元局長について「判決で客観的な証拠と供述が不整合だとの指摘を受けた。検討した結果、判決を受け入れるべきだとの結論に達した」と説明し、「控訴を断念し、上訴権放棄の手続きを行った」と発表した。「基本に忠実な捜査が不徹底だったと言わざるを得ない。元局長に負担をかけ、申し訳ない」と陳謝した。さらに「(前田容疑者の)逮捕となり、深くおわびしたい。地検としては最高検の捜査に全面的に協力する」と言い、約5秒間、深々と頭を下げた。

 大阪地検控訴を断念。ようやく無罪が確定。ドラマチックな展開になってきたな。やはり、これを受けて、どう司法・検察制度を改革していくかだなあ。