007 慰めの報酬

 アクションはすごいが、ここまでアクションを押しまくられると、ちょっと食傷してしまう。最初の30分ぐらいアクションばかりで、そろそろ落ち着いてくださいと言いたくなる。ダニエル・クレイグは好きなのだが、この映画を支配する深刻ぶったムードにはどうも乗り切れない。これまでのジェームズ・ボンドにあった優雅さとユーモアが消えてしまって、精神的にいっぱいいっぱいの殺し屋というキャラクターになってしまった。
 超絶アクションと,心の奥に哀しみを抱えたヒーローというパターンは「ボーン・アイデンティティ」が生み出したものだが、その影響が濃厚に漂う。ビルを飛び移ってい場面などアクションにも似たようなところがある。ジェームズ・ボンドではなく、ジェームズ・ボーンと行った感じ。「カジノ・ロワイヤル」もシリアス調だったが、この映画はシリアスの二乗みたいな感じになっている。
ゴールドフィンガー (デジタルリマスター・バージョン) [DVD] 出演陣を見ると、M役のジュディ・デンチ、「潜水服は蝶の夢を見る」「ミュンヘン」のマチュー・アマリックをはじめ、ジェフリー・ライト(「シリアナ)、ジャンカルロ・ジャンニーニ(「ハンニバル」「流されて」)と芸達者で揃っているのに,何だかもったいない。一方で女優陣が弱い。オルガ・キュリレンコが美しく頑張っているが、ボリビアの諜報員のフィールズ役の女優さんなどはあまりの下手さに卒倒しそうになってしまった。映画出演は初めてというモデルの人かと思ったら、ジェマ・アータートンという人で、ウィキペディアにまで載っている女優さんだった。しかも王立演劇学校出身と知って絶句。演出を担当した監督の責任なのだろうか。
 このもやもや感、アクションは超一流だが、やはり本(シナリオ)が弱いということなのだろう。ゴールドフィンガーならぬオイルフィンガーみたいな形で,全身オイル漬けにされ、ベッドに横たわる女性ヌードの死体も出てくる。この場面は007シリーズへのオマージュなのか、パロディなのか。ともあれ、アクションはすごい。だから、一気に見てしまって、見ている間は楽しめる。
「007 慰めの報酬(Quantum of Solace)」予告編