後藤健生『欧州サッカーを極める』

 副題に「その戦いと栄光の歴史」。ブンデスリーガの香川、長谷部、内田、セリエAの長友、オランダからロシアに移った本田の活躍に加え、いまや世界最高峰といわれるリーガ・エスパニョーラの輝きなど、欧州サッカーのことが気になって、お勉強。といっても、2003年の出版と日韓ワールドカップ後に出た古い本だったが、スペイン、イングランド、ドイツ、オランダ、イタリアなど世界有力リーグとサッカーの歴史がわかり、面白かった。
 目次で内容をみると...

1章 欧州サッカーに刻まれた歴史的記憶
2章 欧州のリーグを味わいつくす
 スペイン【リーガ・エスパニョーラ
 イングランドプレミアシップ
 オランダ【エールディビジ
 ドイツ【ブンデスリーガ
 イタリア【セリエA
3章 欧州サッカーの未来

 これらに加えて、「ヨーロッパをめざした日本人」というコラムが各章の終わりにあり、奥寺康彦三浦知良中田英寿小野伸二稲本潤一中村俊輔高原直泰の7人が紹介されている。ワールドカップの歴史、各国リーグの成り立ち、有名チームの由来がわかって楽しい。サッカーファンならば、みんな知っている話ばかりなのかもしれないが、素人なんで、へえ、と思いながら、読んでしまった。たとえば...
 1942年のワールドカップはドイツで開かれる予定だった(東京五輪は1941年の予定だったから、日独ともに第2次大戦のときに国威発揚の大スポーツイベントを企画していたわけだ)。
 1930年の第1回ワールドカップは建国100周年だったウルグアイに頼み込んで、各国の旅費・滞在費も負担してもらって開催した(それで第1回大会がウルグアイだったのか)。
 サッカーという言葉は、最初の統一ルールを決めたのがフットボール・アソシエーション(協会)で、アソシエーション式フットボールといわれたところから、「association」の「soc」に「er」がついて「soccer」になって生まれたのか、トリビアだなあ。この協会式に反対し、手を使えるルールを主張したラグビー校が提唱した方式のフットボールが「ラグビーフットボール」なのか。なるほどねえ。
 チーム名も、「レアル・マドリード」の「レアル」って何かと思ったら、王室という意味なのか。王室の名前を使うことを許された由緒正しいチームなのか。リアルなマドリードなのか、と思っていた。
 「ACミラン」のACも何かと思っていたのだが、「アソアツィオーネ・ディ・カルチョ」、イタリア語で「サッカー・クラブ」という意味だったんだ。イタリアでは「FC」(フットボール・クラブ)が「AC」になるわけね。
 で、ACミランはもともとは英国人が作ったクラブで、これに対して英国人以外が加入した多国籍クラブが「インテルナツォオナーレ」(イタリア語で「インターナショナル」)で「インテル」になったのか。そう聞くと、わかるなあ。最初、「インテル」と聞いたときは、ITメーカーの「インテル」が氏スポンサーなのかと思ってしまった(「楽天」球団みたいな...)。まあ、イタリアにシリコンバレーが出てくるのはおかしいとは感じてはいたけど...。
 このほかにも、労働者系クラブと上流階層系クラブ、地域の特色とか、欧州各国のサッカーの個性と国民性とか、面白い話がいろいろとあった。ちょっと古い本ですが、歴史が中心なので、楽しめました。古本屋さんで見つけたんだが、今度は新しい本も読んでみるか。