効率的な組織は強くないーー「七人の侍」「マッドマックス2」から学ぶ内田樹のビジネス論が面白い

 内田樹が「『七人の侍』の組織論」というタイトルで、「どういうタイプの共同体が歴史の風雪に耐えて生き延びることができるか」という設問に答えている。これがビジネス論、社会論、コミュニティ論として出色。「七人の侍」のキャラクターを「リーダー」「サブリーダー」「イエスマン」「斬り込み隊長」「トリックスター」に加え、「苦難の時代を癒す者」「保護され、教育され、語り継ぐ後継者」と分類し、特に後者2名の重要性を指摘する。そのどれもが強い組織のために不可欠な人材であるという。
 この「語り継いでくれる者」の大切さの例として「七人の侍」に加え、「マッドマックス2」が登場する。それがこんな具合...

マックスが荒野に立ち尽くしたときに、「自分が死んだあとに長く語り継がれている自分についての伝説」を想像的に先取りしたものを「幻聴」しているのである。なぜなら、「そうでもしなけりゃ、やってられない」からである。車は壊すは、片足は折るわ、片目はつぶれるわ、ガソリンはないわ、食い物はないわ状態で荒野に放置されたマックスが「次の一歩」を歩み出すためには、「荒野にすっくと立ち尽くすヒーローについての物語」を語り継ぐであろう「次世代」を先取りする想像力が不可欠なのである。

 なるほどなあ。これは説得力がある。語り継いでくれる者がいてこそ、どんな絶望的な状況の中でも頑張ることができる。誰か見てくれているという意識が最後の頑張りを引き出す。あるなあ、これは。
 これを読んでいると、なぜ日本の会社が弱体化していったのかも理解できる。効率化と、それと表裏一体をなす官僚化(役所だけではなくて会社もエリート官僚主義)が日本の組織を蝕んでしまったんだなあ。トリックスターも、癒し系も、語り継ぐ者も居場所がない。
 もう一度、映画を見たくなってしまった。
★『七人の侍』の組織論 (内田樹の研究室) => http://t.co/x6f9N8z
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