「砲艦サンパブロ」

 NHK-BSで、スティーブ・マックイーン回顧特集のひとつとして放映していた。1920年代の中国に派遣された米軍水兵の悲劇。1966年の映画だから、ベトナム戦争の時代の社会的ムードを色濃く反映している。欧米のアジアへの介入は、悪意(帝国主義野心)も善意も空回りし、濁流の中に飲み込まれていく、といった感じの映画。中国人の描き方が差別的といった人もいたが、ハリウッド映画なんだから、ある程度の無理解は致し方ない。むしろ、介入すべきでない戦争に介入することで、相手も自分たちも不幸になっていくということを社会派のロバート・ワイズ監督が真っ正直に撮った反戦映画だと思う。
 プライドと功名心の塊の艦長は、救助に行った宣教師からは拒絶され、みんなを敵の包囲から逃すために犠牲になると言いつつ、あっけなく殺されてしまう。国籍を捨ててまで地元に尽くそうとした善意の宣教師も中国の革命軍に撃たれて、非業の死をとげる。米国の「善意」はアジアから見れば、余計なお世話であり、押し付けじゃないかという醒めた認識が見える。一匹狼で孤独で誠実な主人公はマックイーンに向いている。全てに距離を置き、自分だけは傍観者になろうとするのだが、その彼も運命に流れされ、時代の波に飲み込まれていってしまう。ヒロインは助かるけど、救いはそこだけで、何ともハードボイルドな物語。
 ヒロインを演じたキャンディス・バーゲンがまだ新人時代で、初々しい。マコ岩松は、これでアカデミー助演男優賞を受賞した。