朝鮮半島緊迫で、中国メディアの日本関連記事がちょっと変なような気が...

 中国メディアのサイトを見ていたら、ちょっと気になることが...。朝鮮半島情勢が緊迫するなか、日本、韓国、米国の同盟関係分断をめざす編集意図があるのではないかと思わせるような記事が目立ってきたのだ。
 例えば、中国網・日本語版のこちらの写真特集
1946年撮影の米兵と日本人女性の愛情_中国網_日本 => http://t.co/epYhksm
 11月30日にスタートしたものだが、なぜ、いま、この時期に、この写真特集が組まれるのか、わからない。米軍(当時の言葉でいえば進駐軍の)兵士と日本人女性のデート風景など13枚の写真が掲載されているのだが、キャプションはすべて以下のもの。

第2次世界大戦後の日本は米国の占領下におかれ、1945年8月28日には第1陣の米海軍陸戦隊が横須賀に上陸し、15万人の米兵からなる米軍が日本全土を占領。そして8月30日から9月6日にはマッカーサー元帥が46万人の米兵を率いて日本に進駐し、各大都市と戦略拠点を支配した。

 日本人よ、戦争に負けて日本女性を米軍に奪われた屈辱を忘れるな、と言いたいのだろうか。キャプションが、それぞれの写真の説明ではなく、すべて同じであることは、いかにも、急いで作らされたような感じもする。
 このほか、以下のような見出しの記事も...
韓国を抱きこむ菅首相の打算とは_中国網_日本語 => http://t.co/qBx7BJW
 韓国への文化財返還から話を始めたうえで、最後は...

菅首相の韓国との協調強化は、表面的な理由は朝鮮の脅威に対応するためだが、日本の狙いが別のところにあることは分かっている。それは中日間で釣魚島をめぐるもめごとが再発し、日露間でも北方領土問題で矛盾が起こり、多くの敵から攻撃されている感覚だ。さらに重要なのは、日本は世界2位の経済大国の座を奪われ、未来に対しては恐れで満ち溢れており、日韓の安全や国の安全保障業務を強化しようという日本の呼びかけは、米国がアジアに戻るという攻勢にちょうど同調することができる。

 うーん。こちらも韓国と日本の分断を狙っているかのような話の展開。これは「中国網・日本語版」だが、同じ記事が「人民網・日本語版」にも掲載されいて、そちらの見出しは...
菅直人首相が韓国を丸め込む「そろばん勘定」 => http://t.co/RlYe31J
 こちらのほうが日本の「悪意」を強調するタイトルに仕上がっている。
 このほか、人民網・日本語版にはこんな記事も
普天間」が再び日米関係のキーワードに => http://t.co/yFGn5bn
 こちらは事実を報道したものともいえるが、日米離反の火に油を注ぎたいような意図も感じる。この手の記事は以前からもあったのかもしれないが、この時期となると気になる。とりわけ冒頭の写真特集には意図を感じる。
 確かに朝鮮半島情勢は緊迫しているが、問題は北朝鮮。いくら米韓合同演習、日米合同演習があるからといって、中国が北朝鮮と一緒になって、ここまで"日米韓分断"の情報戦を展開する必要はないと思うのだが...。この手の情報宣伝活動は、かえって逆効果という感じがする。米国も韓国も日本も戦争は嫌なわけで、中国にはむしろ超大国としての責任感をもって北朝鮮の暴走を止める役回りをして欲しいというのが願いであるのに...。なぜか冷戦時代の共産主義国家のような古典的な行動をしている。冷戦は終わり、いまや資本主義国にとって、中国は敵対国ではなくて、マーケットなんだけど。マーケットとして理不尽なところに苛立ちはかなりあるけど...。
 しかし、日本攻撃一色かというと、そうでもなくて、こんな記事もある。
中国サッカーよ、日本に学ぶことを恥だと思うな_中国網_日本語 => http://t.co/su1P6mY
 こちらの記事は、こんな具合...

ワールドカップのアジア地区予選やアジア大会での国の代表チームにしてもアジアカップのリーグ戦でのクラブチームにしても、中国は完全に出遅れている。それに引き換え、確かな技術と協調性のある戦術を持つ日本や韓国のサッカーチームは何度となく優秀な成績を収め、アジアの覇者としての地位を揺るぎないものにしている。アジア大会は国家代表チームレベルの試合であり、そこでの成績は将来につながる。その為、U-21サッカー日本代表アジア大会で優勝した事は、日本サッカーがアジアのサッカー界におけるパイオニアとしての地位を手にしたことを示す。

 サッカーファンならずとも、うれしい話。しかも、冒頭の一連の記事と同じ11月30日付けのもの。
 中国にも、日本にも、いろんな人がいて、いろいろと情報を操作したがるのだろう。そうして編集された情報には不快になるものもある。ただ、サッカーの記事があるように、まだ一色ではない。このばらつきがあるうちはまだ救われるんじゃないかと思う。いちいち熱くなってもいけないんだろう。現在のような状況の中でも、中国に多様性の余地があるメッセージと受けとりたくなる(編集部の管理ミスで、すり抜けた記事かもしれないけど、それでも、そう信じたい)。
 ただ、冒頭の写真特集など、あまりにも意図があからさまで、ちょっと嫌だなと思うのは確か。第2次大戦の時代の古典的なプロパガンダの手法だもんなあ。
情報操作のトリック その歴史と方法 (講談社現代新書) 戦時グラフ雑誌の宣伝戦―十五年戦争下の「日本」イメージ (越境する近代) 報道写真と対外宣伝―15年戦争期の写真界