デリンジャー

 大恐慌期の米国のギャング、ジョン・デリンジャーを描いたジョン・ミリアス監督の映画。ジョニー・デップデリンジャーを演じた「パブリック・エネミーズ」の関連映画特集としてWOWOWで放映していた。最近、最新作の放映に合わせて、関連した映画を特集することがNHK-BSやWOWOWで流行っている。映画好きとしては、うれしい。
ビッグ ウェンズデー [DVD] で、この映画、叙情と暴力という「俺たちに明日はない」の系譜につながる映画。ミリアスの映画というと、カルト映画化した「ビッグ・ウェンズデー」がすぐに出てくるのだが、映画としては、この「デリンジャー」が一番で、次が「風とライオン」と「ビッグ・ウェンズデー」なんじゃないかと思う。この映画、アクション場面もよく出来ているが、それ以上に俳優陣がいい。
 デリンジャーを演じたのは、ウォーレン・オーツ。地味なんだけど、好きな俳優さん。オーツは目立つ脇役から、この映画で主演になり、サム・ペキンパー監督の「ガルシアの首」でも主役を演じた。その後はもとの目立つ脇役に戻った。追うFBI捜査官を演じたのは、ベン・ジョンソン。ふたりは、サム・ペキンパーの「ワイルドバンチ」でも共演している(ふたりとも脇役だけど)。
ガルシアの首 [DVD] この頃はまだ駆け出しで、「アメリカン・グラフィティ」や「ジョーズ」に出る前のリチャード・ドレイファスが、ベビーフェイス・ネルソンを怪演している。のちに「パリ・テキサス」で主演となるハリー・ディーン・スタントンも冴えないギャングの役で出ている。改めて俳優の選び方がうまい映画だったんだなあと思う。このほかにも、クロリス・リーチマンとか、ジェフリー・ルイスとか、癖のある名脇役が出ている。
 一方、その後を考えると、残念な役者生活になったのは、プリティボーイ・フロイド役のスティーブ・カナリー。「プリティボーイ」というニックネームそのままの好漢で、見せ場もあり、主演級になっていくのかと思ったら、同じくミリアス監督の「風とライオン」で目立ったぐらいで、その後は、あまり映画では見なくなってしまった。ヒロインを演じたミシェル・フィリップスは、ママス&パパスの大人気歌手ではあったが、映画の世界では今ひとつで終わってしまった気がする。
 この映画、VHSはあったようだが、DVDは出ていないようだった。

デリンジャー [VHS]

デリンジャー [VHS]