内閣危機管理監、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)って何だろう

 東日本大震災は、まさに日本の危機。ということは、今こそ危機管理担当者の出番ということになる。で、テレビを見ると毎日、原発危機を語る枝野官房長官がいるわけだが、考えてみると、内閣には「内閣危機管理監」「内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)の方々がいらっしゃる。首相官邸ホームページには、わざわざ「内閣官房副長官補」の職務を紹介したページがあり、その中に「内閣官房における安全保障・危機管理組織」という図が掲げられ、その職務の重要性が強調されている。
首相官邸ホームページ「内閣官房副長官補」の組織図 => http://t.co/vceCH53
 「内閣危機管理監」も、首相官邸のホームページの幹部紹介で首相、官房長官官房副長官に次ぐ順位で記載されている。
首相官邸ホームページ「幹部紹介」 => http://t.co/uCqCRH8
 それほど重要な人たちは今回、どう行動していたのだろう。グーグル・ニュースを検索しても、名前が出てきたのは、危機管理監が、こんなニュースでさらっと出てきたぐらい。

日米両政府が22日、福島第1原発事故の対応を巡り定期的な協議の場を設置したことが分かった。福山哲郎官房副長官が23日夜、記者団に明らかにした。情報提供が不十分だとして米側が不満を募らせていることが背景にあると見られる。メンバーは米国側が原子力規制委員会、エネルギー省、在日米大使館、在日米軍の関係者。日本側は福山氏、伊藤哲朗内閣危機管理監細野豪志首相補佐官のほか、原子力安全委員会原子力安全・保安院防衛省など。

 日米間の連絡会議で、危機管理監は官房副長官の次で補佐官よりも上座なのかがわかるだけの記事。何だか、アクティブな感じがしない。「危機管理のノウハウ」で有名な佐々淳行氏が以下のようなことを書いていた。

枝野幸男官房長官は、内閣広報大臣としては適任だが、「安全保障会議設置法」では、今回のような大災害の統一的指揮権と責任は官房長官にあり、補佐役は経済産業省原子力安全・保安院ではなく内閣危機管理監であることを思い出してほしい。国内外のボランティアを国が受け入れて、奉仕団を組織するのも国の仕事である。

 実力派・官房副長官で有名だった石原信雄氏もこんなことを言っている。

阪神淡路大震災は早朝に発生したため現地から的確な情報が政府に入らなかった。官邸に専門の指揮官もいなかった。それを教訓に内閣危機管理監をつくった。今回は情報も入っているはずだ。政治は最善を尽くさなければならない。

 阪神大震災を教訓に生まれたスタッフは何をしているのだろう。姿が見えてこないのは、要するに危機管理監が内閣内で軽んじられているということなんだろうか。それとも首相が使いこなせていないのか。危機管理監の伊藤哲朗氏はこんなに立派な経歴を持った人なのに...
首相官邸ページ「内閣危機管理監」 => http://t.co/C5mMK8G
 一方、官房副長官補はこんな人...
首相官邸ページ「内閣官房副長官補」 => http://t.co/dwZ5HrY
 この西川徹矢氏の選任にあたっては、こんな話があった。

政府は11日の閣議で、安全保障・危機管理担当の柳沢協二官房副長官補の後任に、西川徹矢・前防衛省官房長を充てる人事を決定した。西川氏は2年前、小池百合子元防衛相と守屋武昌前次官との対立のあおりで同省を去ったが、異例の官職復帰となった。

 はてなブックマークに残っていた毎日新聞の記事だが、それほど異例の人事をしたのは、能力を買ってのことなのだろうが、今回はどんな活躍をしたのだろう。組織図を見ると、官房副長官補は、官邸の危機管理の要となっている。たとえば、こんな具合...

緊急事態については、地震災害、風水害、火山災害等の大規模な自然災害、航空・鉄道・原子力事故等の重大事故、ハイジャック、NBC・爆弾テロ、重要施設テロ、サイバーテロ武装不審船や弾道ミサイル等の重大事件、新型インフルエンザの発生等、国民生活を脅かす様々な事態が想定されます。そのため、平素から、危機管理のためのマニュアルの整備や特異な事案も想定した訓練、テロ対策の総合調整等を行い、関係機関相互の連携の下、適切な対応がとれるように取り組んでいます。▼また、総理大臣官邸内の危機管理センターにおいて24時間態勢で緊急事態に備えるとともに、事態発生時には、初動対処を実施し、速やかな事態の把握、被災者の救出、被害拡大の防止、事態の終結に向けた対策の協議、政府の対応に関する総合調整等を行っています。

 ちゃんと原子力事故を国家の危機として認識していたのではないですか。これは今回の危機に際して機能したのだろうか。でも、それならば、なぜ、菅首相は、官房副長官を入れ替え、首相補佐官を入れ替え、内閣参与を次から次へと増やすのだろう。使いこなせない政治家が悪いのか、それとも優秀なはずの官僚の方々は実は...、だったのか。危機管理監、危機管理担当の官房副長官補の話、もっとメディアで紹介して欲しいなあ。
 いずれにせよ、ふだんは昼行灯でも、危急存亡の秋に働いてくれれば、さすが、となるものを、やっぱり、というのでは、あまりにも哀しいし、前途を思うと、めまいがしてくる。原発にしても、被災地対策にしても、まだ危機は峠を超えたわけでもないし...。

完本 危機管理のノウハウ

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