スペインの電力供給。風力発電が20%を超え、原子力を抜き、供給源トップの座に

スペインの送電網管理会社REEは31日、同国の3月の電力供給のうち風力発電の占める比率が21%に達し、月別で初めて最大供給源となったことを明らかにした。太陽光、水力などを含む再生可能エネルギーの合計は全体の42.2%。3月の風力による電力供給は前年同月比5%増の47億3800万キロワット時で、隣国ポルトガルの電力需要を満たすことができるという。他の供給源は、原子力19%、水力17.3%、ガス火力17.2%、石炭火力12.9%、太陽光2.6%など。

 スペインといえば、ドン・キホーテが風車と戦った国か。そのスペインで風力が電力供給のトップの座に立ったという。太陽光、水力を合わせると、再生可能エネルギーが4割を超えている。うーん。これまで、電力会社・メーカーを中心に政官産学一体となった「電力コミュニティ」(電力マフィアといったほがいいのか)は、風力・太陽光など再生可能エネルギーに依存することは不可能で、原発以外にクリーンエネルギーはないという論陣を張ってきた。その常識は本当かと疑っていいのかもしれない。
 もちろん、風がどのぐらい利用出来るかは、風土によって違うだろう。必要とする電力量も違うだろう。また、スペインにしても原子力が2番目の電力供給源ということは、原子力の安定した発電をベースに、再生可能エネルギーを組み合わせているのかもしれない。そうだとしても、これまでの常識が正しかったのか、もう一度、さらから考えてみるべきかもしれない。原発ありきの電力コミュニティ、それは電力会社や原発メーカーだけでなく、政治家、官僚、学者、ジャーナリストを含めての集団なのだが、そうした共同体の仲間たちの話だけではなく、もっとオープンに考えてみるべきなのだろう。
 そこで、思い出すのは、NTTのISDNキャンペーン。ADSLが登場し、韓国で高速インターネット網として爆発的に普及し始めた頃、ISDN(サービス総合デジタル網)の推進を図っていたNTTは、ADSLは過渡的な技術で、不安定だと盛んに批判していた。その主張に同調する専門家は多かった。そして、メディアも多くはNTTの話をそのまま信じて、報道していた。で、現実はどうだったか。ADSLは日本でも普及し、ISDNはいまや死語といっていい。電力についても同じようなことが起こりかねない危険性があるのではないかと思う。専門家ほど、自分達のコミュニティの中で視野狭窄に陥る恐れがある。そこに欲得が絡むと、さらに話がゆがむ。自分たちの損になることは信じたくない、見たくないという感情が働く。
 今回は、昔と違って、ネットもあるので、当時よりは多くの幅広い専門家が参戦して、実のある議論が展開されるかもしれない。ともあれ、スペインを見て、やっぱり、再生エネルギーの可能性を頭から否定しないで、もっと真剣に議論する局面なのだろうと思った。エコロジー原理主義ではなくて、現実的に。

風車のある風景―風力発電を見に行こう

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