新年度だから、いま最も役に立つ経済・経営誌を独断と偏見で3誌選ぶとすると...

 東日本大震災の混乱の中で、いつの間にか新年度入りしてしまったが、この季節は1年の思いを新たにするとき。混迷を深める世界で、ビジネスの未来を読み解くために参考になる雑誌は何か。これまで読んでみた経験から、経済・経営誌を選ぶと、この3つだろうか。
 まずは何と言ってもエコノミスト毎日新聞が出している「エコノミスト」ではなくて、英国の「The Economist」。ちょっと気取って「ロンドン・エコノミスト」と呼ぶ人もいる。「僕が読んでいる雑誌はエコノミスト。毎日のやつじゃないですよ、ロンドン・エコノミストのほうね」と言ったりする。ちょっと鼻持ちならない感じに聞こえるけど、雑誌の中身は先見性、分析の深さ、グローバルな視点、どれをとってもメディアのなかで図抜けた存在。ITのことも詳しく、クラウド・コンピューティングの特集も早かった。誌面を見れば、インターネットの時代に世界中の硬派雑誌が苦戦する中で、唯一、気を吐いている理由がわかる。仕事で忙しくて、経済誌、ビジネス誌は1冊読むのがやっというのだったら、「The Economist」で決まりだろう。
The Economistの公式サイト => http://www.economist.com/
Economist
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 でも、英語はしんどいよなあ、という人もいるだろう。わかります。私もしんどい。そこで、裏技がひとつ。ネットメディア「JTpress」は毎週数本、Economistの主要記事の邦訳を紹介している。Economistは週刊誌だが、その週の話題の記事はだいたい、このサイトで読むことができる。それも日本語で。しかも、無料で...。まずは、ここでチェックして、「Economist」が気に入ったら、雑誌をとるなり、デジタル版を契約する手がある(デジタル版の購読料は、雑誌よりも安い)。
The Economist - JBpress(日本ビジネスプレス) => http://bit.ly/kFr6Li
 で、次のお薦め雑誌がこちら。Facta。日本の政治・経済のディープな記事をレポートする雑誌としては「選択」が老舗だが、いまは、元「選択」編集長が創刊した、こちらのほうが勢いがある。スクープも多い。裏から世界や日本の経済を読むには、この雑誌がいまのところ、一番、面白い。コラムも充実している。
FACTAの公式サイト => http://facta.co.jp/
Economist
 そして、最後に経済・経営系の週刊誌なのだが、これが選ぶのに迷う。この分野は「日経ビジネス」「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」の3誌がメーンプレイヤーで、一般的な選択としては「日経ビジネス」なのだろう。部数も3誌の中で最も多い。しかし、どうも最近、誌面の内容に勢いがない。「日経ビジネス」スタイルといったらいいのか、ある種の型にハマり込んでいる感じがする(昔はそれが斬新だったのだが)。よく言えば、格調が高く、悪く言えば、説教がましいところもある。一方、「ダイヤモンド」は昔からビジュアルなデザインに定評があり、読みやすいのだが、どこか軽い。
 ということで、ここは独断と偏見で、週刊東洋経済。時として、ウケを狙った、あざとい特集企画もあるが、経済、ビジネスの視点から注目すべきポイントをついた企画をタイムリーに打ってくる。経済誌の老舗であり、石橋湛山高橋亀吉と硬骨のジャーナリストがいた雑誌だけあって骨もある。記事もコンパクトで読みやすい。ここ数年の日経ビジネスは「物語」に仕立て上げようという情緒性が鼻につく時があるのだが、東洋経済のほうがもっと淡白というか、さっぱりしていて読みやすい。やっぱり経済、ビジネスは「クールヘッド、ウォームハート」の世界で、うちにウォームなハートを持ちながら、文体はクールな方がいい。会社四季報も出している会社なので、投資情報としても充実している。
東洋経済の公式サイト => http://www.toyokeizai.net/
Economist
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 もっとも、「日経ビジネス」はブランドで、日本は権威に弱い社会だから、就活の学生さんが面接で購読誌を答えるときは、「日経ビジネスを読んでいます」と言ったほうが無難かもしれない。読んでいる理由を説明しなくてもいいし。ただ、現実のビジネスに役立てる知的な実利という点からいうと、「東洋経済」のほうがお薦めだと思う。まあ、両方読めば、一番いいのだろう。
 それと、雑誌は編集長次第なので、編集長が変わり、誌面が変われば、評価も変わってしまうかも知れない。これは2011年春時点での意見。