性的暴行事件で逮捕されたIMF専務理事はフランス政界では、とかくの噂もあったらしい

米ニューヨークのホテルで従業員を性的に暴行したとして強姦(ごうかん)未遂などの容疑で逮捕された国際通貨基金IMF)専務理事のドミニク・ストロスカーン容疑者(62)が16日、裁判所に出廷した。ストロスカーン容疑者側は100万ドルの支払いと引き換えに保釈を請求したが、メリッサ・ジャクソン裁判官は同容疑者がパリ行きの便に搭乗しようとしていたことを理由に、国外逃亡の恐れがあるとして保釈請求を退けた。

 性的暴行事件で逮捕されたIMFのストロスカーン専務理事、超辣腕弁護士を使っても、保釈は許されなかったらしい。CNNを見ていたら、連邦裁判所が国際問題を考慮して保釈することはあっても、州の裁判所だと、もともと保釈をあまりしないという解説だった。事件が起きると、いろいろと話しは出てくるもので、サルコジ大統領に対抗できる社会党の最有力大統領候補だっただけに陰謀説がある一方で、やっぱりという声もあるらしい。2008年にはIMF内で不倫問題を起こしているし、もともと女性問題については「ビョーキだよね」みたいな噂があったという報道も流れている。
 で、この事件の報道を見ていると、3つの問題を投げかけている。
IMF(国際通貨基金) - 使命と誤算 (中公新書) ひとつは、IMFの今後の運営。ギリシャポルトガルなどユーロの財政問題もあるし、後任人事も問題。とりわけ、中国の台頭。これまでは事務局トップの専務理事を欧州勢がとって、ナンバー2を米国が占めるというのがお決まりだったらしいが、中国がトップの座を狙ってくるのではないかという警戒心が欧米勢にあるらしい。一方で、既に世界経済成長の原動力が新興国に移ったのだから、アジアなど新興地域からトップを出してもいいんじゃないかという進んだ意見もあるらしい。世界経済が揺れ動く中、この予期せぬ出来事で、IMFのトップ構造がどう変わるのかは要注目らしい。
・ユーロ圏のギリシャ問題協議、IMF専務理事不在の影響も - WSJ日本版 => http://on.wsj.com/iUWTlZ
IMF内の権力構造変化、トップ職独占の欧州の地位脅かす可能性 - Reuters => http://bit.ly/kjODGi
Debate Over Strauss-Kahn's Successor: Europe and Asia Set for Battle over Top IMF Post - SPIEGEL ONLINE => http://bit.ly/jQdMY5
サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領 (新潮選書) 次がフランス大統領選挙への影響。サルコジに勝てる唯一の社会党候補という声もあったらしいから、社会党にとってはダメージ。一方、これをきっかけに極右政党が台頭してくるのではないか、という恐怖心もあるらしい。サルコジ大統領の人気が落ちているだけに、社会党ならば、まだしも、極右の国民戦線のマリーヌ・ル・ペンあたりが、これをきっかけに浮上して当選というのは、極右以外の人たちからみれば、悪夢のシナリオとなる。
IMF専務理事逮捕:仏大統領選の本命失墜 サルコジ氏に追い風 - 毎日jp => http://bit.ly/iryRxE
「打倒サルコジ大統領」本命自滅、仏政界大揺れ(読売新聞) => http://bit.ly/mqzreX
メディアと政治 改訂版 (有斐閣アルマ) そして最後に、フランス政界とジャーナリズムの関係。フランスでは、政治家の私生活については触れないのが不文律になっていた。ミッテラン大統領の愛人問題も公然たる秘密だったが、誰も書かなかった。ストロスカーン氏の女性問題(女癖の悪さ)はフランス政界と記者の間では知られていたらしい。それだけに、今回のような事件が起きて、どこまで報道すべきだったのか、という議論が起きているという。不倫は文化といっていいのかという話。有力大統領候補ということで、ストロスカーン氏に女性問題について聞いたメディアもあるらしいが、そのときの答えは「Yes I like women, so what?」(英語のメディアからの引用なので、英語ですが)。なんだか、横山ノック先生を思い出すなあ。日本もセクハラ天国といわれるお国柄だが、フランスよりもメディアは厳しいかもしれない。
France questions itself over Dominique Strauss-Kahn's 'open secret' - The Guardian => http://bit.ly/lXulmy
Politicians’ Secrets Raise Questions ― Memo From France - NYTimes.com => http://nyti.ms/l675ca
 まあ、有罪が立証されるまでは推定無罪なので、ストロスカーン氏が犯罪をおかしたのかどうか、わからないが、昔の話まで出てきて、これで大統領候補としては終わってしまったのだろうな。陰謀説を主張しても、今までの話がボロボロと出てくるしなあ。
Dominique Strauss-Kahn to face fresh sex assault complaint - The Guardian => http://bit.ly/mD8zXz
IMF専務理事逮捕、仏国民に衝撃―「陰謀ではないか」との声も - WSJ日本版 => http://on.wsj.com/l3XH5l