芥田知至『エネルギーを読む』

エネルギーを読む(日経文庫)

エネルギーを読む(日経文庫)

 エネルギー問題の入門書。新書らしく産業構造から現状、問題点までコンパクトにまとまっている。体積当たりの価格で見ると、白金、金、銀、銅、アルミ、鉄鋼(各種製品の平均)、原油LNG、鉄鋼(銑鉄)、石炭(コークス用)、石炭(一般)なのだな。この本は福島原発事故の前の出版で、原子力評価の動きも伝えているのだが、原子力については...

 今のところ原子力発電をエネルギーの主力にすることはできません。原子力発電を利用するのにあたって必要な技術を、人類はまだ十分には持っていないからです。つまり、原子力発電を行った後に発生してくる核燃料廃棄物の修理方法がまだないのです。

 このあたりエネルギーの専門家として冷静な筆致。事故が起きた場合の処理も含め、「後」が問題なのだなあ。
 で、目次で内容をみると...

[I] エネルギーとは何か
 1.便利な言葉であるが捉えどころのないもの
 2.物理学的な定義
 3.エネルギーの単位
 4.エネルギーの大きさ
 5.エネルギーの価値
 6.地球環境問題とエネルギーとの関連
[II] 人類のエネルギー利用の歩み
 1.近代以前のエネルギー
 2.石炭の時代
 3.戦略物資としての石油
 4.エネルギー大量消費の時代
[III] エネルギー財の特徴
 1.エネルギーと経済活動
 2.市場メカニズムで制御しにくい性質
[IV] エネルギー産業の概要
 1.石炭産業の盛衰
 2.石油企業の近年の動き
 3.天然ガス事業の同行
 4.再び注目が集まるウラン鉱業
 5.電力産業の需要対処法
[V] 問われる地球温暖化への対応
 1.低炭素社会への道のり
 2.日常生活は変わるのか
 3.日本の技術力がカギを握る
[VI] エネルギーの経済モデル
 1.希少なエネルギー資源
 2.ホテリング理論
 3.分析対象としてのエネルギー商品
[VII] エネルギー価格の変動
 1.価格の変動
 2.原油価格の変動は説明可能か
 3.投機による価格変動を大きくした要因
 4.エネルギー価格の行方
[VIII] 期待されるエネルギー技術の転換
 1.2050年を考える
 2.原子力に未来を託せるか
 3.自然エネルギーに頼れるか
 4.求められる今後の対応

 エネルギーに関する問題がほとんど網羅されている。