若宮健『なぜ韓国は、パチンコは全廃できたのか』

なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか(祥伝社新書226)

なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか(祥伝社新書226)

 パチンコ、正確には日本のパチンコ台を改造した「メダルチギ」を韓国は全廃した。そのレポート。韓国の全廃に至る流れは、盧泰愚大統領親族のスキャンダルと絡んで、一気に進んだようだが、このあたり、もう少し詳しく知りたかった。韓国の場合、歴史が浅く、まだ日本のように政治家、官僚(警察)、業者、暴力団を含めた政官業複合体として巨大化していなかったことが全廃しやすくしていたのだろうか。しかし、これを読んでいると、パチンコを産業してみていてはいけないのだな、と思う。電力問題からもパチンコにスポットライトがあたっているが、なぜ日本はパチンコを全廃できないのか、考えてみるべき時なのかもしれない。
 で、目次で内容をみると...

1章 なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか
2章 なぜパチンコは、廃止されなければならないのか
3章 なぜ日本は、パチンコを廃止できないのか

 3章で言うと、曰く言いがたい警察とパチンコ業界の関係があるのだろうなあ。民主党もパチンコにはやさしいし、当分、廃止への動きは出てこないのだろうなあ。電力消費の問題で、石原都知事がパチンコ業界批判をしていたが、これには、どこも乗ってこないし...。メディアもパチンコメーカーの広告を解禁した時に落城してしまったといわれても仕方ないのだろうなあ。
 で、いくつか印象に残ったところを拾うと...
 パチンコ業界のターゲットは、年金生活者と主婦という。時間を持て余している人が標的になっているということか。
 パチンコ店にATMがあるとは知らなかった(パチンコやらないからなあ)。これもすごい話。で、パチンコ店のATM設置事業は「トラストネットワークス」という会社が運営していると言うが、「今のところは独占事業のようである」と著者は言う。この会社、ウェブページはあるが、情報開示は少なくて、ただページがあるだけに近い。
★「トランスネットワークス」サイト => http://www.trust-networks.com/
 最近のパチンコ店には顔認証システムがあり、来店客の顔を検知し、客ごとの管理も可能になるという。すごいなあ。開発したのはオムロンだとか。
★遊技管理システムとそのプログラム、及び遊技許容装置 - 特開2003−251059 => http://bit.ly/m0827N
★顔画像センシング技術 OKAO Vision | オムロン電子部品情報サイト => http://bit.ly/lTOJrF
 パチンコによる賭博は禁止のはずなのに、なぜ商品を現金化できるのか。風営法で「客に提供した商品を買い取らせる行為」は禁止されており、これは店外にある換金所が直接、パチンコ店に買い取らせてもアウト。そこでできたのが「三店方式」という。これは、特殊景品の卸問屋を仲介にする形式で、「パチンコ店から客、換金所、卸問屋、パチンコ店という三店を経由することで、法律を潜り抜けている」のだという。これなど、法律を厳格に適用すれば、摘発できるような気もするけど、まあ、やる気がないということかと。
 政治とパチンコ業界の関係についても、いくつかの団体が紹介されている。これらの団体をウィキペディアでみると、関係している議員さんたちの名前がわかる。
パチンコチェーンストア協会(政治分野アドバイザー) - Wikipedia => http://bit.ly/mqz0dZ
国際観光産業振興議員連盟(通称カジノ議連) - Wikipedia => http://bit.ly/kKJ5Ws
民主党娯楽産業健全育成研究会 - Wikipedia => http://bit.ly/jH9IY9
民主党新時代娯楽産業健全育成プロジェクトチーム - Wikipedia => http://bit.ly/m5EldZ
自民党遊技業振興議員連盟 - Wikipedia => http://bit.ly/mAV5hj
 パチンコの業界団体は、官僚との関係が取り沙汰される。本で紹介されている団体だけでも、こんなに。
★保通協(財団法人・保安電子通信技術協会) => http://www.hotsukyo.or.jp/
★日電協(日本電動式遊技機工業協同組合) => http://www.nichidenkyo.or.jp/
★日工組(日本遊技機工業組合) => http://www.nikkoso.jp/
★全日遊連(全日本遊技事業協同組合連合会) => http://www.zennichiyuren.or.jp/
★回胴遊商(回転式遊技機商業協同組合) => http://www.kaidou.or.jp/
 以上が関連団体として紹介されているもので、このほかに、こういう団体も
★PCSA(パチンコチェーンストア協会) => http://www.pcsa.jp/
★日遊協(日本遊技関連事業協会) => http://www.nichiyukyo.or.jp/
★同友会(日本遊技産業経営者同友会) => http://www.e-pachinko.com/
★余暇進(余暇環境整備推進協議会) => http://www.yokashin.or.jp/
 何だか、すごい。巨大パチンコ帝国だなあ。官僚と業界団体は表裏。官僚と業界が支配する日本みたいに見えてきてしまう。これはパチンコ業界に限らず、どの産業にも、こういう団体があるんだろうなあ。このあたりは本とは直接ない感想だけど、韓国のパチンコには、こうした官僚と業界の関係はなかったのだろうなあ。パチンコひとつをとっても、いまの日本が見えてくるのかも。