アンドリュー・J・サター『図解主義!』

図解主義!

図解主義!

 副題に「複雑なビジネス取引も図で考えると、はっきりわかる」。確かに物事を理解するのに図解は役に立つが、この本で図解にあたって、いくつかのルールを提唱しており、このノウハウを使うと、リスクとリターンの感懐などビジネスの構造を理解するのに役立つ。なるほどね、という感じ。これはビジネスだけではなくて、複数の項目が絡み合う関係性のある物事、つまりは社会の問題や人間関係を考える上でも有効なツールとなるかもしれない。
 で、本書で提唱されている図解のルールを一部を要約して紹介すると、こんな具合...

・四角=人物、または企業
・実線矢印=「モノ」または「対価」の流れ
 (金銭、物品またはサービス、法的権利など)
・楕円=所有されている対象物(資産または負債)
・直線=所有状態を示す。
・フォーク方矢印=お金やその他の対価が、複数回に分けて渡される場合
・破線カーブ矢印
 =カーブの終点が四角の横にあり、始点が中に浮いている=満たさないニーズ
 =四角と四角の間を結んでいるときは、価値(対価以外)と動機を表す
・終点が菱形の直線矢印=リスク、債務
 (矢印はリスクまたは債務を負う人に向けて伸びる

 以上が主な記法ルールで、このほか、時間経過を表す方法として

・番号付き矢印
 普通の図解に番号付き矢印を使う
・スナップショット方式
 2つ以上の図解を「実行前」「実行後」といった具合に使う
・プールコース方式
 それぞれの登場者に、水泳のプールコースのようなものを与え、長さで時間を表し、左から右への移動を使って時間経過を表す。決まった登場者間で、複数回の取引が行われる場合に有効

 また、プロセスを表す方法としては、フローチャート方式やプールコース方式、番号付き矢印方式を使えるが、ここでの追加ルールとしては

・長方形=一般的なプロセスのステップ
・六角形(横平面)=政府機関またはその他公的機関
・六角形(上下平面)=政府機関またはその他の公的機関による行為

 というような具合。図解はどんなものでもいいともいえるのだが、この本にあるように要素の特性や機能によって図解のルールを決めると、ビジネスの仕組みが一段と視覚的に理解しやすくなることも確か。このあたり、米国流のプラグマティズムにもとづくノウハウ書といった感じ。
 最後に目次を紹介すると...

第1章 なんで、図解?−−知らないことは何かを知る−−
第2章 図解の基本−−だいこんを買う−−
第3章 見えないものを買う?−−権利の取引について−−
第4章 時は金なり−−時間を図解で表現する−−
第5章 お好み焼きを作るにには−−プロセスの表現−−
第6章 チャンスをつかめ!−−どう転ぶかわからない、を図解する−−
第7章 人を動かすものって何?−−価値の矢印、リスクの矢印−−
第8章 免許皆伝!−−数珠つなぎの分解の術−−
第9章 完成・図解術!−−足りないモノをあぶりだせ−−

 もろもろ参考になる本でした。