福井健策『著作権とは何か−−文化と創造のゆくえ』

著作権とは何か―文化と創造のゆくえ (集英社新書)

著作権とは何か―文化と創造のゆくえ (集英社新書)

 思い立って著作権のお勉強。著作権の弁護士さんの本なので、思い切りコンテンツ産業保護の立場に立った「著作権を守らないと怖いぞ」というタイプの警告本かと思ったものの、お勉強と考えて読み始めた。ところが、これが面白かった。あとがきに「本書ではあえて『豊かで多様な文化の創造と、人々のそれへのアクセスをどう守るか』という視点にこだわり抜いてみました」と言うとおり、著作権の本来の趣旨である文化創造のための権利保護という視点から、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」と「ウエストサイド物語」、「ジャングル大帝」と「ライオンキング」の関係、現代アート、パロディ、引用などについて実例も豊富に論じており、参考になると同時に考えさせられた。著作権の範囲を決めるのは難しい問題であって、その意味で、現実に判決が出た問題についても著者の意見を語っているところも好感が持てた。
 必ずしも著作権全体を概説した教科書的な入門書ではないが、本のタイトル通り、「著作権とは何か」を知り、考える本として最適だった。この本は当たりでした。
 目次で内容をみると、こんな感じ...

第1章 それは「著作物」ですか
第2章 著作者にはどんな権利が与えられるか
第3章 模倣とオリジナルの境界
第4章 既存作品を自由に利用できる場合
第5章 その権利、切れていませんか?
第6章 「反著作権」と表現の未来

 『著作権の世紀』のほうも読んでみようか、と思う。
著作権の世紀―変わる「情報の独占制度」 (集英社新書 527A)