名誉と栄光のためでなく

 このところ、シネフィル・イマジカでよく放映している。アルジェリア戦争を舞台にした反戦映画なのだが、なぜかハリウッド製。「Lost Command」というのが英語の原題。監督がマーク・ロブソンで、出演陣は、アンソニー・クインアラン・ドロンモーリス・ロネクラウディア・カルディナーレジョージ・シーガルミシェル・モルガンという米・仏・伊の国際スター競演の映画というのも、いま考えると不思議。インドシナ戦争で共に戦ったフランス空挺部隊の戦友が、アルジェリア独立戦争で敵味方に分かれて戦うはめになるのだが、1966年5月に米国公開となると、フランスのお話というよりも、当時ベトナム戦争を戦っていた米国と重ね合わせて見ることになってしまう。映画も植民地の独立を抑圧する大国の戦いの不毛さを感じさせる内容になっている。
アルジェの戦い [DVD] ただ、ウィキペディアを見ると、ジッロ・ポンテコルボのリアリティ溢れるアルジェリア独立闘争映画「アルジェの戦い」がイタリアで公開されたのが、1966年9月。アルジェリア独立戦争を描く映画としては、ハリウッド的なメロドラマでもある「名誉と栄光のためでなく」は、荒々しいリアリズムに徹した「アルジェの戦い」に吹き飛ばされてしまう。もっとも、「アルジェの戦い」は、植民地からの独立を目指す解放戦線側が展開したテロ闘争(警官の射殺やら、フランス人が集まるカフェや競馬場の爆破やら)を生々しく描いているだけに、いまテレビで放映されることはないだろうなあ。抑圧と絶望と貧困の中からなぜテロが生まれるのか。また、レジスタンスを展開したフランス軍将校がテロ対策のために拷問に走っていく(そして、それが戦術的には効果をあげる)ところも淡々と描かれており、歴史記録映画のような作品だけど、世界がテロに悩んでいるいま、刺激が強過ぎるかもしれない。