ウィーン工房 1903-1932(汐留ミュージアム)

ウィーン工房は1903年、ウィーン市の小さなアパート3部屋で、建築家のヨーゼフ・ホフマンとコロマン・モーザー、そして財政的な後ろ盾ともなった実業家のフリッツ・ヴェンドルファーの3名がはじめた企業です。建築から、インテリア、家具、照明や食器にいたるまでの生活芸術のあらゆる装飾を一貫したスタイルで統一する「総合芸術」を標榜し、制作から販売までを一手に引き受けました。その思想は、当時巷に流布していた粗悪な大量生産品を廃し、質の高い職人の手仕事を理想としたウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動を受け継ぐものです。

 デザインがアートだった時代と言うか、エクステリアからインテリアに至るまで、デザインにこだわった集団。いま見ても洗練されたセンスのものが多い。封筒から請求書1枚に至るまで、デザインに対するこだわりがある。スティーブ・ジョブズの元祖かもしれない。しかし、ビジネスとしてはかなり難しかった様子。大量生産の時代、加えて20世紀の初頭、第一次世界大戦からハイパー・インフレ、大恐慌というなかで、アーツ・アンド・クラフツを運動からビジネスにするのは至難の業だったのだろう。装飾品はやや古さを感じたが、家具、壁紙、書籍などは見ていて楽しく、いまのデザインにも参考になるようなものがあった。
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