アカデミー賞、作品賞はやはり本命の「アーティスト」だった。女優賞はメリル・ストリープ

米映画界の最高峰を決める第84回アカデミー賞の授賞式が26日、米ハリウッドであった。無声映画からトーキーに移りゆく時代のハリウッドを描いた白黒・無声映画「アーティスト」が仏映画初の作品賞を獲得。ジャン・デュジャルダンが主演男優賞を、ミシェル・アザナビシウス監督が監督賞を獲得、衣装デザイン賞と作曲賞もとって5冠となった。主演女優賞は、「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」のメリル・ストリープで、29年ぶりの受賞。

 アカデミー賞、3D映画ではなく、サイレント映画がとって終わった。作品賞の受賞スピーチで、ビリー・ワイルダー監督の名前が連呼されていたように、やはり人間を描く映画を復権しようということだろうか。とはいえ、全体を見ると、ギョーカイ色が強い感じ。「アーティスト」は3Dへのアンチテーゼとなるギョーカイの新たなトレンドとして本命視され、評判通り作品賞、監督賞、主演男優賞などを獲得したのも、その流れに見える。
 主演女優賞はメリル・ストリープで29年ぶり3回目。いつもノミネートされているので、もっといっぱい取っているかと思ったら、29年も時間が開いていたのだな。助演男優賞はゲイを演じたクリストファー・プラマーだった。ゲイのほか、マイノリティ、エスニック、病人、心や体に障害を抱えた人、酒や薬の依存症の人などは受賞の定番となっている感じもする。演技の見せどころでもからなのかな。
 で、今回のもうひとつの話題は、イラン映画の「別離」が外国語映画賞をとったことだろうか。イラン映画は初の受賞らしいが、ホルムズ海峡をはじめ米国とイランの関係が緊迫するなかでの受賞で、話題を呼びそう。もっとも、この映画、ベルリン映画祭でも金熊賞をとっているし、イラン映画はもともと水準が高いだけに、これもまた本命のひとつ。結局のところ、番狂わせは、ジョージ・クルーニーが主演男優賞を逃したことだろうか。
 それと「アーティスト」の関係者席には、ハーヴェイ・ワイスンタインの姿が見えた。作品賞の受賞スピーチで、製作者が名前をあげてもいた。米国内の配給は、ワインスタイン・カンパニーが担当したらしい。このMiramaxの創業者、毀誉褒貶が激しいが、映画の目利きであることは確かなのだな。
アカデミー賞候補と受賞者リスト(公式サイト=英語):Oscars Nominations 2012=> http://bit.ly/ymtxAI
★第84回アカデミー賞授賞式サイト | WOWOWオンライン => http://bit.ly/xICZYE
★映画「アーティスト」公式サイト => http://artist.gaga.ne.jp/
★映画「別離」公式サイト => http://www.betsuri.com/
★They know him as God, but you can call him Harvey Weinstein | The Guardian => http://bit.ly/xSENdI
ワイルダーならどうする?―ビリー・ワイルダーとキャメロン・クロウの対話 お熱いのがお好き [Blu-ray] ビリー・ワイルダー自作自伝