西部謙司『サッカー戦術クロニクル』

サッカー戦術クロニクル

サッカー戦術クロニクル

 副題に「トータルフットボールとは何か?」ということで、トータルフットボールの歴史を辿る本。トータルフットボールというと、1974年ワールドカップ西独大会のオランダチームが元祖と思っていたのだが、この本を読むと、その源流はスコットランドにあり、30年代のオーストリアチーム、50年代のハンガリーチームという先駆者があったという。ローマは1日にして成らずというか、奥が深いなあ。
 サッカーの戦術の勉強になる本。一つの戦術が編み出され、一般化し、対策が練られ、次第に効力を失っていく。そして、その対策に対応した戦術がまた新たに生まれる。進化の歴史なのだなあ。チェルシー時代のモウリーニョ監督が何をやったのかということも、この本を読んで初めて知った。2008年の本なので、グアルディオラバルセロナについては言及されていないが、ACミランアヤックスバルセロナレアル・マドリードアーセナルといった名門クラブ、さらには、オランダ、ブラジル、アルゼンチン、イングランドなど各国のサッカーの歴史がわかる。
 目次で内容を見ると…

Chapter 1 時計じかけのオレンジ
Chapter 2 ACミランルネッサンス
Chapter 3 バグンサ・オルガニザータ
Chapter 4 天才ヨハン・クライフの挑戦
Chapter 5 アルゼンチンとマラドーナ
Chapter 6 ジダンアヤックスの時代
Chapter 7 ギャラクティコ
Chapter 8 モウリーニョの4-3-3
Chapter 9 ハードワークの現代
Chapter10 トータルフットボールの起源

 「時計じかけのオレンジ」はオランダ・チーム。「バグンサ・オルガニータ」はブラジル、「ギャラクティコ」は銀河系軍団、レアル・マドリード、「モウリーニョの4-3-3」はチェルシー時代の戦術解説。「トータルフットボールの起源」はオーストリアハンガリーなど欧州大陸のサッカーの進化に大きな影響を残したスコットランド人コーチ、ジミー・ホーガンを中心とした物語。 トータルフットボールの伝道師というと、ヨハン・クライフを思い浮かべるのだが、その前に、ジミー・ホーガンがいたのだな。そして、スコットランドコーチングスクールで、クライフの天敵とも言えそうなモウリーニョが学んでいたというのも、何だか奇縁だなあ。