チームFACTA『オリンパス症候群』

オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社

オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社

 副題に<自壊する「日本型」株式会社>。オリンパス事件をスクープした経済情報誌「FACTA」が、オリンパス事件を生み出した日本の経済風土を解読する。本の帯(腰巻)にあった宣伝文句を読むと...

なぜ、20年間も損失を「飛ばし」続けられたのか。なぜ、かくも長年にわたり、不正は暴かれなかったのか。企業、官庁、監査法人、銀行、証券、メディアによる壮大な「共犯構造」がつくり出した日本型企業の病巣を暴く。

 FACTAオリンパスの問題をスクープしても大手メディアはどこも追わず、「事件」になったのは、日本社会のアウトサイダーである英国人社長の存在があってこそ。どうして、ここまで強固な隠蔽・共犯構造ができてしまったのか。それを知るには、日本の企業社会の歴史を必要がある。しかし、オリンパスの損失を生むことになった財テクだ、バブルだといっても、20年以上前の大昔の話で、リアルに知っている人は少なくなってきた。そこで、この本では丹念に「失われた20年」を追っていく。
 目次で、その内容を見ると、こんな感じ...

序 章 ポチたちの天国
第1章 かくも長き不在ーー90年代のロスト・ディケイド論
第2章 「飛ばし」の請負人ーー00年代の第二ロスト・ディケイド論
第3章 「ウチ」という遺伝子ーー日本株式会社論
第4章 無知から正義は生まれないーーメディアの大罪
付 章 獄中のホリエモンオリンパス」に憤る
おわりにーーホイッスルを鳴らせ

 付章の「ホリエモン」は、20年以上におよぶ巨額粉飾決算でも上場維持となったオリンパスについて、単年度の粉飾で一発退場になったライブドアホリエモンが獄中からFACTAに寄稿したもの。このおまけのホリエモンの寄稿も含め、歴史を振り返ることで、うちに優しく、アウトサイダーを排除する日本が浮かび上がる。読んでいると、オリンパス事件が突発的・単発的な事件ではなく、一連の出来事のなかで生まれきた一つに過ぎないことが理解できる。それだけに問題は深刻といえる。FACTAとしては、雑誌では伝えきれない構造問題を語りたかったのだろうなあ。その意味で、この本はFACTAの副読本ともいえるかもしれない。
 筆者である「チームFACTA」を構成する4人のうち3人が日本経済新聞出身。そのせいもあってか、日本を代表する経済メディア、日経に対する批判はとりわけ厳しい。しかし、読んでいると、それだけ日経を愛しているんだなあ、とも思えてくる。最近、新聞は存在感をなくし、無視はされても、批判もされない存在になりつつある。期待さえされなくなりつつある。でも、筆者たちはいまだに愛しているからげ、現在の有り様に怒るんだなあ。愛するから、言葉が激しくなるのだなあ。これを聞く日経の若手記者がは、どうなのだろう。こうしたOBたちの批判に反発して、調査報道型のスクープでお返しをすればいいんだろうけど。
 最後に、「FACTA」自体もそうなのだが、この本も、ときどき言葉遣いが下品というか、荒っぽくなる。内容があるのだから、もうちょっと上品というか、言葉のトーンを抑えてもいいと思うのだが...。「物言うなら、声低く語れ」という言葉もあるし...。
 この本が出たことで、オリンパス事件をスクープした山口氏の本、内部告発して解任されたウッドフォード元社長の本、そして山口氏の記事を掲載した「FACTA」の本と、オリンパス事件をめぐる本が出揃った。どれも読み応えがあった。しかし、これまで新聞社にしてもテレビにしても、オリンパス事件のような大事件が起きると、本を出したもんだけど、今度はそれはないのだろうか。早く過去のことにして、忘れてしまいたいのだろうか。

サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件

サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件

解任

解任