矢島祐利『アラビア科学の話』

アラビア科学の話 (岩波新書 青版 G-60)

アラビア科学の話 (岩波新書 青版 G-60)

 西欧的偏見の影響なのだろうが、イスラム、アラビアというと、信仰心は厚くても、というか、厚いがゆえに、科学は遅れている感じがする。しかし、長い歴史のスパンで考えれば、アラビア、イスラムは文化的先進地域だった時代がある。数字だって「アラビア数字」というし、西欧文明にしても、ギリシャの学問はアラビアに継承され、再び西欧に戻っていく。また、中国、インドなどの科学がアラビアに学ばれ、それが西欧に伝わっていったこともある。そんな興味で読んでみた本。科学史の教科書のようでした。
 目次で内容を見ると...

1.アラビア科学の意義と役割
2.アラビア科学の始まり
3.数字と数学
4.占星術天文学
5.物理と技術
6.錬金術と化学
7.医学・薬学および博物学
8.地理と歴史
9.哲学
10.アラビア科学の西欧への伝達

 アラビア科学の繁栄期は、9〜12世紀という。学問の担い手は、アラビア人、イスラムだけではなく、ユダヤ人も他の民族も入っていた。それほど開放的で、先進的だった文化がどこで変わってしまったのか。十字軍に代表されるような西欧の野蛮人の暴力的な侵略のためなのかどうか。なぜ、変質していったのか。今度はそのあたりも勉強してみようか。あるいは、トルコの作家、オルハン・パムクの小説あたりを読むと、イスラムと西欧の文化的関係が意外と見えてきたりするのだろうか。