村山治『検察ーー破綻した捜査モデル』

検察―破綻した捜査モデル (新潮新書)

検察―破綻した捜査モデル (新潮新書)

 検察取材の第一人者が解説する検察の戦後史。中心テーマは特捜検察。特捜検察はいかに生まれ、隆盛を極め、時代の流れから外れ、信用失墜に至ったか。それは検察の歴史だけでなく、裁判所を含めた司法全体の歴史でもある。取調調書偏重は検察だけの責任とはいえず、裁判所も含めた問題であり、裁判員制度検察審査会の起訴権などの司法の構造改革は当初、想定した以上の変化を社会にもたらしたことがわかる。
 目次で内容を見ると、こんな感じ...

第1章 諸悪の温床「取り調べ」
第2章 「特捜検事の犯罪」はなぜ生まれたか
第3章 「国策捜査」はあるのか
第4章 「小沢捜査」はなぜ批判を浴びたのか
第5章 「検察の正義」って本当に正義?
第6章 メディアは検察の共犯者なのか
第7章 検察の組織と出世双六

 筆者は特捜部については、こんな考え方...

 私は、今の独自捜査中心の特捜部については、いったん看板をおろし、国税当局からの脱税、証券取引等監視委員会からの市場犯罪などの告発事件を中心に捜査する組織に変えた方がいいと思っています。「経済事件部」に看板を掛け替えるか、あるいは現在の刑事部の一部にするイメージです。(略)
 仮に今後、ロッキード事件のような国の威信がかかる大事件が降ってくれば、東京地検検事正の権限でその「経済事件部」や刑事部、公安部から優秀な検事や事務官を集め、臨時の「特別捜査本部」を設置すれば良いのです。そもそも戦前には常置した特捜部はありませんでしたが、シーメンス事件や日糖事件などの大事件を摘発しています。

 なるほど、そうだなあ。組織は常置すれば、組織の存続のために仕事を作り始めるし、深刻化・高度化する市場経済事件の摘発のためにも、筆者の言うような方法のほうがいいのだろうなあ。
 もうひとつ、本を読んでいて思ったのは、検察幹部だった三井環氏の検察裏金告発問題も、大阪特捜検事の証拠捏造事件と同様、検察のひとつの転機となる事件だったのだなあ。