山口修一、山路達也『インクジェット時代がきた!』

インクジェット時代がきた!?液晶テレビも骨も作れる驚異の技術? (光文社新書)

インクジェット時代がきた!?液晶テレビも骨も作れる驚異の技術? (光文社新書)

 クリス・アンダーソンの『MAKERS』と同じように、3Dインクジェット・プリンターがもたらす革命状況をレポートした本。アンダーソンの二番煎じというわけではなく、筆者はインクジェット技術の開発に携わってきた人で、この本のほうが一歩先に出ていた。日本でも、この新たな技術に着目し、21世紀の産業革命を予感していた人がいたのだな。その点、心強い。
 目次で内容を見ると、こんな感じ...

はじめに 傾きつつある日本のものづくり産業
序 章 20世紀型ものづくりの終焉
第1章 インクジェットとは何か?
第2章 ケーキに印刷、家にも印刷
 (1)印刷をまるかじりーー食品業界
 (2)モード界に革命ーーアパレル業界
 (3)外装だっておしゃれにプリントーー建築業界
第3章 2次元から3次元の印刷へ
 (1)思い出も工芸品も、まるごと復元ーーアート、工芸
 (2)紙のように薄いハイテク機器ーーエレクトロニクス
 (3)スリム化する重工業ーー鋳物
第4章 モノから医療へ
終 章 インクジェットで未来はどう変わるのか?
おわりに インクジェットデジタルものづくり革命

 実例が豊富で興味深かった。技術の図解解説も入っていて、わかりやすい。
 印象に残ったところを抜書きすると...

 品質の高い製品を大量に生産する。この成功体験から抜け出せないこともあり、日本は長い不況の中にあります。こうした状況において日本の製造業が目指すべきは、大量生産品の安売り競争に参入することではないはずです。特にインクジェット技術は、他の製造技術と違って模倣が困難という特徴があります。デザイン自体は簡単に真似されますが、インクそれ自体についてはなかなか真似られるものではないのです。

 なるほどなあ。どこで競争するのか、という問題でもあるなあ。
 期待の産業ではあるが、こんな一節も...。

 リソース最適化されたものづくりは、まさに知価創造的な産業であるといえます。そして、そうであるがゆえに、製造業分野の雇用を増やすわではないという点に注意が必要でしょう。

 知価社会なんだなあ。そして省資源・コスト削減効果...

 トヨタの「カイゼン」に代表されるように、従来のものづくりでも材料やエネルギーを減らす取り組みは進行していますが、型から大量生産する方法を最適化するのと、型すらつくらずにモノをつくる方法では、その桁が違ってきます。

 インクジェットは破壊的なイノベーションになるのかもしれないのだなあ。

インクジェット時代がきた! 液晶テレビも骨も作れる驚異の技術 (光文社新書)

インクジェット時代がきた! 液晶テレビも骨も作れる驚異の技術 (光文社新書)