渡邉恒雄『反ポピュリズム論』

反ポピュリズム論 (新潮新書)

反ポピュリズム論 (新潮新書)

 話題の書。自民党復権しようとしている時代に読んでおいたほうがいいかな、と思って、読み始めてみたのだが、読み切れなかった。橋下・維新の会の台頭に危機感を持って、老政治記者が筆をとったという感じの本。言おうとしていることはわかるのだが、タイトルから予想通りの内容と言ったらいいのか、途中で何となく、時間がもったいなくなって、他の本に移ってしまう。
 小泉政権が諸悪の根源というところでは、日本の保守政治の王道に立つ本といっていいのだろうか。しかし、小泉政権の政策のために中間層が毀損し、格差が拡大したと見るのか、インターネット革命、グローバル化、中国など新興国経済の台頭など世界経済の構造変化が原因なのか、そのあたりは意見がわかれるだろうなあ。というか、小泉政権だろうが、そうでなかろうが、この20年で中間層が厳しくなったであろうことには変わりはないと思うのだけど...。日本の保守は基本的に大きな政府なのだな。そのあたりが英米の保守と違う感じがする。資本主義と言うよりも社会主義的な傾向が強いように思える。まあ、もっときちんと読み込まないうえで、論評しないといけないのだけど。
 目次で内容を見ると...

第1章 政治家の衰弱は誰のせいか
第2章 橋下現象はなぜ起きたか
第3章 大連立構想はなぜ失敗したか
第4章 ポピュリズムの理論的考察
第5章 大衆迎合を煽るメディア
第6章 日本をギリシャ化させないために

 付録として「無税国債」私案がついている。
 しかし、橋下・維新の会の急拡大を支えたのも〝ポピュリズム〟ならば、そのポピュリズムを操作しようとして一手間違えれば、あっけなく見放されてしまうのも〝ポピュリズム〟。自民党復権を支えているのも、「日本を取り戻そう」と叫んでいる安倍さんに感応した〝ポピュリズム〟なんだろうか。それとも、3年前、「政権交代」に〝ポピュリズム〟してしまった自己嫌悪による揺り戻しか。
 「ポピュリズム」というレッテルを張ることは、世の中の大勢が自分の思う方向と反対の側に行った時に「お前ら、バカ」と言っているような感じもあって、「反ポピュリズム」もひとつの「ポピュリズム」みたいで、何となく好きでないし、居心地の悪い言葉だなあーーと、読んでいて、改めて思った。むしろ、そんな大衆を相手にしても、「それにもかかわらず」と、より良き方向、正しい方向に戦い続けることが政治のような気がするのだけど。そんなことをマックス・ウェーバー先生が書いていた記憶がある。それが政治を転職とするものの覚悟だと。

職業としての政治 (岩波文庫)

職業としての政治 (岩波文庫)