映画版「レ・ミゼラブル」の予告編を見ていて思う違和感。バリケードに赤旗ではなく三色旗?

レ・ミゼラブル 25周年記念コンサート [DVD] 「レ・ミゼラブル」は年末期待の大型ミュージカル映画で、ヒュー・ジャックマンラッセル・クロウはじめ出演陣も好きなのだが(エポニーヌは25周年記念コンサートで熱唱したサマンサ・バークスだし)、予告編を見ていて、どうしても消えない違和感が...。バリケードの場面でフランス国旗である三色旗が乱立しているの目立ち、赤旗を圧している。舞台版「レ・ミゼラブル」の第一幕最後のクライマックス「ワン・デイ・モア(One Day More)」のところだったと思うのだが、バリケードで大きな赤旗が打ち振られる。たぶん、西側演劇史上で、これほど美しく、また大々的に赤旗が振られることはなかった。しかし、映画版の予告編では...。
 映画を実際に見ないうちに、判断するのは早計だが、比較的、簡単に思いつくのは、ハリウッドのマーケティング的配慮。演劇という狭い世界ならば、まだしも、映画という広い世界では、赤旗を振りまくっては保守派から非難されたり、抵抗感を抱かせるのではないか、という商業的・政治的配慮だろうか。でも、フランス国家の権力と立ち向かって、市民が立ち上がったときに、国旗を振るというのは...。自由、平等・博愛という建国の理念を思い出せ、という意味を持たせたいのかもしれないが、それよりも「赤旗共産主義」という色がつくのを嫌ったように見えてしまう。舞台では、抵抗のシンボルとしての人民の血の色である赤旗で、プロパガンタ的な思想性はないけど、でも、スタジオのお偉方は嫌うのだろうなあ。もし、そうだとしたら、いかにもハリウッド的なマーケティングで何だか興冷めな...。
 実際はどういう判断なのだろう。舞台版では、赤旗倒叙する場面には圧倒的な迫力と感動があるのだが、このあたりを映画ではどう処理しているのだろう。あの名場面でも三色旗を振っているのだろうか。それとも、パリ・コミューンのときには、三色旗とともに赤旗があったというのが史実なのだろうか。映画は史実に忠実なのか、それとも商業主義に忠実だったのだろうか。
バリケードに三色旗が立つ映画「レ・ミゼラブル」の予告編(44秒目近辺)