ヨラム・バウマン『この世で一番おもしろいマクロ経済学』

この世で一番おもしろいマクロ経済学――みんながもっと豊かになれるかもしれない16講

この世で一番おもしろいマクロ経済学――みんながもっと豊かになれるかもしれない16講

 このシリーズの「ミクロ経済学」も面白かったが、この「マクロ経済学」も面白かった。マクロ経済学のテーマは、「成長」と「大恐慌」の解明という。それは今も続く永遠のテーマかもしれないなあ。金融政策のあり方、財政政策のあり方、そして貿易問題、格差問題、規制の問題、政府の役割などが議論のテーマとなる。これを読んでいると、世界の主流(というか、正確には欧米のだが)経済学者がどのように世界を捉えているのかが分る。そして、どの議論が正しいのかという正解を得ている者はまだいない。だから、正解は「聖杯」といわれたりもする。
 この欧米流の経済学的思考から日本はちょっと外れている感じもする。どれが正解ということはないし、欧米が絶対というわけではないのだが、ただ1つ注意したいと思うのは、この本を読んでいても、トレードオフの視点、理論だけではなく現実に検証しようというプラグマティックな考え方が色濃くあること。正義を強制することが必ずしも人々を幸せに導くわけではないし、一方で何でも市場に任せれば良いという考えも浅薄ということを現実をベースに議論する。絶えず現実にフィードバックしながら、「みんながもっと豊かになれるかもしれない」方法を考え続けることが経済学のベースにあるのだな、と、読んでいて思う。
 経済学を勉強しようという気持ちにさせる本でもある。
この世で一番おもしろいミクロ経済学――誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講