内田義雄『戦争指揮官リンカーン』
- 作者: 内田義雄
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/03
- メディア: 新書
- クリック: 14回
- この商品を含むブログ (18件) を見る
カスター将軍によるネイティブ・アメリカンの虐殺も、ベトナム戦争下のソンミ村の事件も、そしてアフガニスタンやイラクで起きていることも、南北戦争に原型があることがわかる。第二次大戦下、敵国民の戦意を喪失させるために、日本やドイツの都市を焼き尽くそうとした戦略爆撃も、北軍の南部破壊に、その原点があるように見える。映画「風と共に去りぬ」では、北軍によるアトランタ焼き討ちが前半のクライマックスになっているが、この炎に包まれ、焦土と化すアトランタは、その後の広島、長崎、東京、ドレスデンの原風景だったのかもしれない。北軍のシャーマン将軍は今だったら、戦争犯罪人として、ハーグの国際法廷で裁かれていたのだろうなあ。ユーゴスラビア内戦のように。
リンカーン大統領の姿だけでなく、南北戦争が米国に残した戦争マニア的後遺症まで考えさせる刺激的な本だった。読み終わって、何となく、スティーブン・スピルバーグ監督の「リンカーン」を見てみたくなった。スピルバーグは南北戦争をどう描いているのだろう。