宮藤官九郎『え、なんでまた?』

え、なんでまた?

え、なんでまた?

 宮藤官九郎が「週刊文春」に連載しているコラムのうち、2010年9月9日号から2012年11月29日号分を再編集・加筆したもの。この時期から、わかるように、東日本大震災の話も、「あまちゃん」執筆の話、「中学生円山」撮影の話などが出てくる。「ハンサムなのにバカ。そんなに男に憧れます」という書き出しの「石だ石だぁ!石をぶつけろぉ〜〜!」に「バカンサム系俳優」として登場するのは、勝地涼。「少年メリケンサック」にも出ていたが、最近では「あまちゃん」の「前髪クネ男」役で、1話だけの出演なのに強烈な印象を残していた。これを読むと、前から宮藤官九郎が好きな役者さんだったのだなあ。このほか、震災の話、復興の話などは、「あまちゃん」の震災・復興の描き方のベースになっている考え方が見える。
 震災を描いた映画として、宮藤官九郎が思い起こしたのは、イランのアッパス・キアロスタミ監督の「そして人生はつづく」だという。

1990年に死者5万人を記録したイラン地震。最も大きな被害を受けた村に監督の代表作「友だちのうちはどこ?」の主人公の少年が住んでいる。監督は少年の安否を確かめるために被災した村を訪ねる。映画は地震の5日後に撮影されたそうですが、拍子抜けするほど和やかで牧歌的です。(略)作為がない。台本もメッセージもない。作り手が予め理想の展開を抱いてそっちに導いたり、都合の良い部分だけを取ったりしないから人間の色んな側面が見える。大人も子供も可愛らしく、ドキュメンタリー以上に真実の日常をとらえている。今この映画の凄さがよく分かります。

 「あまちゃん」の世界を生み出すうえで、参考になっているのかも。この映画も見たくなってしまった。

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 本に話を戻すと、巻末には、「あまちゃん」に登場する大人計画の3人、皆川猿時(磯野心平先生役)、杉村蝉之介(アイドル評論家・カメラ小僧のヒビキ一郎役)、荒川良々(北三陸駅副駅長の吉田さん役)の特別鼎談も収録されている。この3人、「とびだせボーイズ」と銘打たれている。
 「あまちゃん」は、オーディションで能年玲奈が主役に選ばれたわけだが、宮藤官九郎は「僕がオーディションで選ばなかった女優さんは、その後必ずブレイクするジンクスがあります」という。「名前は挙げられませんが、あの人もあの人も、あの人さえ落としました。そんな相手と別現場で会うと再会するとかなり気まずい」とのことで、オーディションで落とした後、ブレイクした女優さんに「初めまして、じゃないですけどね(笑)」といわれたことがあるという。で、このコラムの締めは、こんな感じ。

 とりあえず先見の明がない僕に選ばれなかった皆さんには、むしろ輝かしい未来が待っている。そして運悪く選ばれてしまった能年玲奈さんには、そんな俺の忌まわしいジンクスを払拭して欲しい。そんな思いで選考しました。よろしくお願いします。

 ジンクスは払拭された様子。

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