稀代のストーリーテラー、山崎豊子が死去。超絶面白い小説を残す一方、盗用疑惑など毀誉褒貶も激しかった

医学界の暗部をえぐる「白い巨塔」など、社会問題や歴史的事件を迫力ある人間ドラマに描き上げてきた作家の山崎豊子(やまさき・とよこ=本名杉本豊子=すぎもと・とよこ)さんが二十九日、心不全で死去した。八十八歳。大阪市出身。(略)中国残留孤児の半生を描く「大地の子」、瀬島龍三氏がモデルとされた「不毛地帯」、苦悩する日系二世が主人公の「二つの祖国」は戦争三部作といわれた。財閥家をめぐる愛憎劇「華麗なる一族」や日本航空がモデルとされる「沈まぬ太陽」など、多くの作品が映画やテレビドラマに。

 山崎豊子が死去。映画やテレビになった小説が多く、どれもこれも、ともかく面白かった。映画やテレビでも面白かったのは、それだけ物語がよくできていたんだなあ。現実の出来事に題材をとった作品が多く、社会派といわれたが、モデルを美化し過ぎているという声もあった。なまじ面白いだけに、悪役とされた人は、事実かどうかを超えて断罪されてしまって、たまらなかっただろうなあ。
 この描き方は事実に反すると文句をいっても、フィクションです、といわれてしまうんだろうなあ。でも、読む方は、これって、あの話をモデルにしているんだよね、と思って読んでいるから、現実と虚構の区別がつかなくなってしまう。善玉として小説化された人はいいけど、悪玉を割り振られた人は大変ですわな。知り合いにも某作品の主人公を実際に知っている人がいて、「あいつが善玉か」と怒っている人がいた。まあ、それでも第三者として読んでいる分には、白黒はっきりしたほうが小説としては面白いんだけど...。
 再三、盗用疑惑を問題視されたのも、この人の特徴だった...。それに関しては、こんな本が...。

山崎豊子 問題小説の研究―社会派「国民作家」の作られ方

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 この本は手厳しく検証している。例えば、この本の場合...
大地の子〈1〉 (文春文庫)

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 一部は、この本がタネ本になっていると...
チャーズ 中国建国の残火

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 『チャイナ・ナイン』『チャイナ・ギャップ』『チャイナ・ジャッジ』などの著者、遠藤誉氏の体験記。遠藤氏自身も、山崎氏の盗用疑惑について本を書いている。
卡子【チャーズ】の検証

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 というわけで、幾度も問題を指摘され、叩かれた作家だけど、その小説は、というと...。どれもこれも面白かったんだなあ、これが...。難儀やなあ。ノンフィクション作家だったら、おしまいだったんだろうけど、小説家だったから、どこか許されてしまったのかなあ。資料として使いました、で済んでしまうみたいな...。あるいは、売れる作家に、出版社も新聞もテレビも甘いということか。ともあれ、タイミングのいい題材の選び方を含め、稀代のストーリーテラーでした。
【やぶしらず通信・関連ログ】
鵜飼清『山崎豊子 問題小説の研究』を読んで - やぶしらず通信 yabuDK note
【参考】
ウィキペディアで「山崎豊子」を検索すると => wikipedia:山崎豊子
・グーグルで「山崎豊子」を検索すると => google:山崎豊子
・アマゾンで「山崎豊子」を検索すると => amazon:山崎豊子
白い巨塔〈第1巻〉 (新潮文庫) 華麗なる一族〈上〉 (新潮文庫) 不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))