曽木幹太『ASAKUSA STYLE−−浅草ホームレスたちの不思議な居住空間』

ASAKUSA STYLE 浅草ホームレスたちの不思議な居住空間

ASAKUSA STYLE 浅草ホームレスたちの不思議な居住空間

 東京の中の異空間というか、衝撃の写真集。2003年発行の本で、今は撤去されてしまった(と思われる)隅田川沿いのビニールシートハウスの内側を紹介した本。副題にあるように、まさに「浅草ホームレスたちの不思議な居住空間」。外見からは想像もできない、整理整頓された部屋があったりする。その間取りを住宅雑誌のように淡々と紹介しているところが面白い。ともあれ、食生活の豊かさも含め、その暮らしぶりは衝撃的。この本の当時は、1カ月に一度、隅田川沿いの道路の見回り、清掃があり、そのときは解体して撤去。見回りが終わると、また組み立てる。まさにノマドだなあ。
 しかし、東京にこんな空間があったとは驚き。ホームレスという言葉から連想するものとは、かけ離れた整然とし居住空間に感嘆する。テレビも、ビデオも、本棚もあったりする。文化的だなあ。この建物、現代の方丈庵ともいえるのだろうか。ホームレスの掘っ立て小屋の中にも、どこか方丈記の時代から延々と流れる日本文化の伝統が生きているんだろうか。不思議な気持ちになってしまう本。
 その一方で、この居住空間を見ると、撤去だあ〜と言う人も出てくるんだろうなあ。この本が撤去を促進することになったのかもしれない。自由勝手に住処をつくって、こんなこと、許されません、と。しかも、こんな快適そうな空間で、と。違法建築の排除で、一般社会の常識なり社会秩序の維持としては当然のこととはいえるのだけど、どこか、その自由奔放さに対する嫉妬もあったりして。