フランスでも、米国でも、名門新聞で社長辞任やら、編集トップ解任やら

 インターネットの浸透でニュースを読む習慣が変わり、オールドメディアの新聞は大変だと思っていたら、今日は立て続けに、こんなニュースが...。
 まずフランス...

フランスの有力紙「ルモンド」で、経営の立て直しのため電子版の強化を推し進めてきた社長が経営改革の進め方を巡って社内から反発を受け、辞任に追い込まれる事態となり、デジタル時代の新聞の在り方がフランスでも議論となっています。

 名門紙、ル・モンドの社長が電子版の方針をめぐって編集と対立して辞任に追い込まれたという、お話。転換期というのは大変だなあ。
 と思っていたら、米国でも...

米紙ニューヨーク・タイムズは14日、女性初の編集主幹を務めたジル・エーブラムソン氏(60)が職を退き、ディーン・バケット編集局長(57)が引き継ぐと発表した。

 こちらも世界に冠たる名門紙、ニューヨーク・タイムズの編集主幹が突然の解任。編集主幹本人からのコメントも発表されなかったため、「なぜ?」「どうして、いま?」と、米英のメディアが盛り上がっている。こんな具合...
Why Jill Abramson Was Fired : The New Yorker
Jill Abramson forced out as New York Times executive editor | Media | theguardian.com
Why Jill Abramson's departure will ricochet - John F. Harris and Hadas Gold - POLITICO.com
Was Jill Abramson Fired After Complaining About Pay Discrimination? - The Huffington Post
Jill Abramson Fired from the Times: Was It About Money and Sexism or Management Style? - The Daily Beast
Making News at the New York Times (The New Media World) New Yorkerの記事がよくまとまっているのだが、いろいろと読んでみると、前任の男性編集主幹と比べると報酬・年金がかなり低く、これをザルツバーガー会長に訴えたことが不興を買ったとか、そもそも、この賃金格差自体、女性差別じゃないかとか(最近の新聞の苦境に加え、前任者との職歴の違いを考えると、仕方がないという見方もあったりするが、ともあれ、経営者は女性につべこべ言われたくなかったんじゃないかと...)、ネット時代に対応するために編集と広告の垣根を低くしたい経営と独立性を重視する編集の対立があったとか、あるいは、ネット化を推進するために編集局長に相談せず、ガーディアンからネットに強い編集幹部を取ろうとしていたという編集内対立説とか、ともあれ、女性差別からネット時代の新聞経営と編集の問題とか、旬な話題が満載であることが、この解任劇に対する注目度を高めている様子。
 編集と経営の対立の一因じゃないかと思われるのは、編集との垣根が曖昧なネイティブ広告にニューヨーク・タイムズが乗り出すという、こちらの話...
メディア・パブ: NYタイムズ、なぜネイティブ広告導入に追い込まれたのか
 ジャーナリズムの王道を行くかのようなニューヨーク・タイムズがよくネイティブ広告に踏み切ったと思ったら、編集局の内部では、そう簡単な話ではなかったのかもしれない。
 どの説が編集主幹解任の真相なのかはわからないが、いまの新聞社の厳しさを象徴するような話なのだなあ(意外と、単純に人間関係の問題かもしれないけど...)
 で、新しい編集主幹になるディーン・バケットという人はロサンゼル・タイムズ(LAタイムズ)の編集幹部だった人だが、LAタイムズが経営危機に陥り、大規模な編集人員のリストラを経営陣が打ち出した時に、抗議して辞任した過去を持つ。調査報道で名をなした生粋のジャーナリストらしいが、経営陣が収益重視を進めれば、まだ、ひと波乱、ふた波乱ありそうだなあ。
 ともあれ、フランスと米国を代表する新聞の大騒動。それに比べると、日本の新聞は天下泰平。少子高齢化社会で活字世代がまだ主流だからだろうか。

2020年新聞は生き残れるか

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