アメリカン・ハッスル

 「ダークナイト」シリーズのクリスチャン・ベールがいきなりハゲデブで登場する映画。FBIに捕まった詐欺師がFBIに捕まって、おとり捜査に協力させられる話を描き、ともすれば、「スティング」のようなサスペンスタッチの痛快コメディになるところだが、監督がデヴィッド・O・ラッセルとなると、そんな単純な話にはならない。悪役であるはずの政治家も悪人とは言い切れないし、野心満々のFBIも検事も真っ白な正義な味方というわけでもない。面白くて、人を食っていて、それでいて、どこか哀しき物語ともいえる。
 役者が揃っていて、クリスチャン・ベールエイミー・アダムスブラッドリー・クーパージェニファー・ローレンス、ジェレミー・レナー。みんないい。エイミー・アダムスが愛人で、ジェニファー・ローレンスが正妻なんだが、この配役、逆みたいな感じもするんだけど、二人ともいい。ほんの少しの登場場面だけど、マフィアの顔役を演じるロバート・デ・ニーロも強烈な印象を残す。人間が描かれているから、俳優たちも出たがるんだろうか。それぞれが演じがいがある役なんだろうなあ。
 で、考えてみると、クーパー、ローレンス、デ・ニーロは「世界でひとつのプレイブック」、クリスチャン・ベールエイミー・アダムスは「ザ・ファイター」と、いずれもラッセル監督の作品に出ていた。みんな、お気に入りの役者だから、息が合っているはずかな。