チャレンジャー号 73秒の真実

 WOWOWで放映していた映画(録画しておいたのを、ようやく見る)。WOWOWの番組紹介は、こんな具合...

ノーベル賞を受賞した物理学者ファインマンをオスカー俳優W・ハートが熱演。1986年に起きたチャレンジャー号爆発事故の73秒間に潜む真実を追う衝撃の社会派ドラマ。

 スペースシャトル、チャレンジャー号の爆発事故の真相を解明する調査委員会のドキュメンタリー・ドラマ。委員の多くが政府であったり、NASAであったり、軍であったり、それぞれの組織のしがらみに縛られている中、ただ一人、ワシントンとの利害関係のない独立した存在のファインマン氏が、同じ委員の空軍将軍や女性宇宙飛行士サリー・ライドの陰ながらの支援に助けられながら、爆発事故の真実を暴き出すという実話のドラマ化。米国であろうと、どこであろうと、国家は官僚主義になっていき、その制約を逃れて、自由に考え、発言することは難しいのだなあ。謎に一歩一歩迫る推理小説的な面白さもあり、面白かった。
 ノーベル賞受賞者であり、軽妙な自伝で有名なファインマン博士を演じたのは、ウィリアム・ハート。晩年、がんに侵されていた姿をリアルに演じている。顔色が悪く、やつれて、体調が悪い中で、戦い続ける姿を描く。日本も原発事故の解明には、こうした科学者がいてくれるといいんだなあ。科学的知識を駆使するだけではなく、科学をわかりやすく解説することにも長けている。貴重な人だったのだなあ。しかし、官僚機構の中で真相を解明するには、内部告発者が重要なのだなあ。事故の真相究明も知識だけでは行き着けなかったかもしれない。その意味で、時間がたたなければ、ここまではっきりとは描けなかったドラマだったのだろう。
 ファインマンの一般向けエッセイでは『ご冗談でしょう、ファインマンさん』が有名だが、チャレンジャー事故調査委員会の顛末については『困ります、ファインマンさん』に描かれているらしい。

困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫)

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