ハンナ・アーレント
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しかし、この映画が日本でヒットしたというのも不思議な気がする。個人が確立しているといわれる米国でさえ、世の常識と違うことを発言すれば、友人まで失い、孤立する。空気を読まないことすらネガティブに捉えられる日本では、どれだけ難しいか。毒舌家といわれていても、テレビに出るような人は、反対の意見をいうことで自分のキャラをつくるか、それ以上に、どこまで言っても許されるかを計算しているし、極論に見えて、それが世の中の本音だったりする。真実を語るということとは別の世界だったりする。そんな日本にあって、アーレントをどう見るのか。自分にはできそうもない勇気を見て、すごいな、と思うのか。
アイヒマンにしても、イェルサレムの法廷の実写が出てくるが、そこで語られる「命令されたから」「あの時代には仕方なかった」とでも言うような論調は、日本の戦争犯罪についても、よく語られる論法だし、その弁解に共感、同意しているところがある。見ている人たちは「悪の陳腐さ」「凡庸な悪」をどう考えているのだろう。自分の内側に「凡庸な悪」があることを感じて、ぞっとするのか、それても、自分以外はみんな、「凡庸な悪」と見ているのだろうか。この映画をみんな、どういう感覚で見ていたのだろう。団塊世代を中心に受けたらしいけど、どういう感覚で見ていたのだろう。ハンナ・アーレントは哲学者として人気があったから、その流れだろうか。若き日を思い起こしているのだろうか。
監督のマルガレーテ・フォン・トロッタはフォルカー・シュレンドルフの前夫人。シュレンドルフと共同で監督した「カタリーナ・ブルームの失われた名誉」が監督デビュー作だという。フィルモグラフィーを見ると、「ローザ・ルクセンブルク」などという名前も見える。出演陣では、ハンナ・アーレントの若いころを演じたフリーデリーケ・ベヒト(FRIEDERIKE BECHT)が清楚で知的な美人。アーレントは若い頃は美人で知られたというから、そういうことか。ベヒトは「愛を読む人」にも出演していたらしい。
で、アーレントの『イェルサレムのアイヒマン』は読んだことがあって、そのメモはこちら。
★ハンナ・アーレント 『イェルサレムのアイヒマン』に関する雑駁な読書メモ - やぶしらず通信
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映画には「ニューヨーカー」の伝説的な編集長、ウィリアム・ショーンも登場する。カリスマ編集長とあって、この人に関する本もいろいろとある。参考に。
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