徳大寺有恒・島下泰久『2015年版 間違いだらけのクルマ選び』を読む:本にも寿命があるのかも

2015年版間違いだらけのクルマ選び

2015年版間違いだらけのクルマ選び

 徳大寺有恒氏の遺作となった本。巻末の著者略歴を読むと、『間違いだらけのクルマ選び』が出たのは1976年といういから、もう40年近くも前から、この本ってあったんだなあ。その当時は自動車評論はメーカーべったりだったろうし(今もそうなのかな...)、辛口というのか、問題点も指摘する本は衝撃的だったのだろう。日本車の進化に一定の役割を果たした本なのだろうなあ。昔、何年版か忘れたけど、この本を買った時は、フォルクスワーゲンのゴルフを最も評価している時代だった。その思想に感化されて実際、自分もゴルフを買って乗ってみたこともある。確かに良いクルマで走りは好きだったけど、日本の猛暑に耐えるにはエアコンの性能があまりにも悪くて辟易したなあ。夏はオーバーヒート気味だった。今は改善されているだろうけど、ドイツは寒い国なのね、と当時は思ったもんだった。冬場のヒーターの効きはすごく良かったし...。ともあれ、このところ、久しぶりにクルマに興味を持ちだして、2015年版を読んでみた。
 「クルマ選び」は徳大寺有恒氏というよりも、島下泰久氏の本になっていた。徳大寺氏、クルマを乗りまくるという歳でもなくなっていたんだなあ。島本氏は徳大寺氏ほど(良くも悪しくも)自分が理想とするクルマの明確な姿が固まっていない感じがした。加えて、昔読んだ時よりも、対象となる車種が減っているように思える。評価車のカバー率が下がっているというのか。やっぱり量が欲しいなあ。電気、燃料電池などの次世代エコカーの紹介には熱心だが、外車もフィアットもポロも出ていないし、最近人気の軽自動車にしても、軽自動車は自動車として、おすすめできないと思っているのか、さらっとしている。そうならばそうで、問題点を赤裸々に書けばいいのに(安全性はどうかとか)。「クルマ選び」というよりも、自動車業界レポート、新車レポートみたいになってしまっていた。昔のテイストも残っているけど、何かちょっと違う感じ。自分で買うクルマを選ぶ参考としては量的にも不十分というか...。
 自動車の世界にインパクトを与え、進化に貢献してきた本だとは思うけど、本にも寿命があるのかな。久しぶりに読んでみると、往年の勢いはなくなっている感じがした。「クルマ選び」での参考度という点からみても、ちょっとだったし...。クルマに求めるものが多様化しているので、本づくりも難しいのかなあ。走る楽しさという点からクルマを論じるならば、英国の「トップギア」ぐらい飛んでしまったほうがいいような気がする。あの番組、おバカな企画で楽しませるけど、批評は結構、真面目で辛辣。性能が良くても価格が高過ぎるとか、同じオカネを出すのだったら、こっちのほうがおすすめ、とか、はっきり言う。逆に、多少の欠点はあっても、それを補う走る楽しさを教えてくれるクルマも紹介するところがマニアック。辛口のこの番組で評価が高かった日本車はスバルだった。最近の富士重工業の好調ぶりを見ていると、トップギアって結構、見る目があるのかもしれないと思う。というか、影響力かな。
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