ホテル・マジェスティックのM.バーでサイゴンの夜景を眺めつつ「ホテル・カリフォルニア」を聴く

 ホーチミン市というよりもサイゴンという地名が似合うホテル・マジェスティック。1925年オープンで今年、創業90年の老舗ホテル。横浜のホテル・ニューグランドに似た雰囲気だと思ったら、ニューグランドは1926年設立だった。同じ頃にできたホテルだったのだ。歴史のあるホテルだけに数多くの作家、著名人が泊まっており、ベトナム戦争のときは外国人特派員たちのたまり場としても知られていた。
サイゴンのいちばん長い日 (文春文庫 (269‐3))一号線を北上せよ<ヴェトナム街道編> (講談社文庫)ベトナム戦記 (朝日文庫) そんなホテルの8階にあるのが「M.バー」。このバー、入ると左手は屋上(ルーフトップ)のオープンエア・スペース。眼下にはサイゴン川が流れ、遠くの灯りを眺めながら、夜風にあたっていると気持ちがいい。さらに、名物の「ハッピー・サイゴン」というカクテルを飲んで、くつろぐと、ちょっと作家気分になってくる。こうして開高健も飲んでいたのかなあ、とか。近藤紘一も沢木耕太郎も、ここでサイゴンの風を感じ、何を考えていたのかなあ、とか。しみじみと、サイゴンの夜を感じることができます。ホーチミン市という言葉よりも、サイゴンという名前の響きのほうがいいなあ、と感じます。
 バーにはバンドも入っていた。これが都会の夜の心にしみるスタンダードジャズではなく、ロック中心のフィリピン・バンド。ボーカルはラップまでやっていた。演奏も歌もうまかったけど、ちょっと不思議な感じ。何曲か聞いていると、聞き覚えのあるメロディー。「ホテル・カリフォルニア」だった。サイゴンホーチミンになった街のバーで、ベトナム戦争終結40年の年に「ホテル・カリフォルニア」かあ。ホテル・カリフォルニアがリリースされたのは、1977年らしいから、特派員たちがここで、この曲を聴くことはなかったんだろうけど、ロックが演奏されたりしていたんだろうか。ロックよりもジャズが似合うバーだけど...とか、考えてしまった。しかし、この選曲、不思議だなあ。ホテル・マジェスティックホテル・カリフォルニアかあ。
 バーを入るときには気が付かなかったのだが、出ると、まず目につくのは、廊下に飾られた、この写真...。

 カトリーヌ・ドヌーヴも来ていたのだ。「インドシナ」を撮影していた頃だろうか。そして、その左を見ると...。

 おお、Japanese Writer、開高健開高健は、ホテル・マジェスティックにとっても忘れがたい、お客様だったのだなあ。ますます、しみじみと歴史を感じてしまう。

 サイゴンの街を展望するというと、ビクテスコ・フィナンシャル・タワーの「サイゴン・スカイデッキ」が有名。地上49階からホーチミン市内を360度展望できる絶景ポイントではあるのだが、窓ガラスが汚れているところは、ちょっと興ざめ。加えて、入場料が20万ドン(1100円ぐらい。ベトナムにしては高めな感覚)。

 M.バーは老舗ホテルのバーだが、値段は意外と安い。ハッピー・サイゴンを1杯たしなむ程度だったら、ナッツがつまみに付き、生バンドの演奏も楽しめて(テーブル・チャージなしで)、税・サービス料込みで20万ドンを切る。ともかく少しでも高所から展望することが好きな人とか、できるだけ遠くまで見たい人は別だけど、サイゴンの夜景を楽しむという点からいうと、地上8階ではあるけど、Mバーのほうが圧倒的に満足度が高い。特に二人だったら、Mバーのほうがオススメだなあ。
Hotel Majestic Saigon サイト(英語) => http://www.majesticsaigon.com.vn/index.php
★ M.バーの紹介ページ(英語) => http://www.majesticsaigon.com.vn/mb.php

ホテル・カリフォルニア

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