東京オリンピック2020はヤクザ・オリンピックになるんじゃね、という声が海外で出ているのだとか

 今朝、ネットを見ていて、気になった記事をひとつ。ちょっと前の記事ですが...

1枚の写真が波紋を広げている。どこかのクラブで撮られた写真で、左に座っているのが日本大学の田中英寿理事長。右のノーネクタイのスーツ姿が山口組6代目の司忍(本名・篠田建市)組長である。

 おお、以前から「FACTA」が日大スキャンダルをレポートしていたが*1、その日大理事長と暴力団幹部のツーショット写真が出ていたのだ。さらに驚いたのは、この記事の続きで出てくるのだが、田中理事長はJOC日本オリンピック委員会)の副会長で、このツーショット写真、海外のメディアが報じたものだという。おおぉぉぉ。大スキャンダルのような気がするのだが、国会で野党議員がこの問題をとりあげたときの質疑が報じられたぐらいで、新聞もテレビもあまり報じていない。その背景には「何者かが、日大批判の急先鋒だった右翼・敬天新聞社を襲撃した」ことがあるのだとか。それで、国内メディアは....。怖〜。
 結局、そうした国内的事情とは無縁な海外メディアが報じたらしいのだが、「現代ビジネス」に出ている写真は、香港の有力英字メディア「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post)」のもので、こちらにある。
Olympic official faces scrutiny over photo taken with Yakuza boss | South China Morning Post
 この記事、4月16日(4月21日アップデート)のものだが、ネットを散策していたら、同じ写真がこちらにも...
JO, Yakuzas et valse des milliards : pourquoi personne au Japon n’a osé prendre le risque de publier la photo par laquelle le scandale arrive | Atlantico.fr
 スクープが売り物のフランスのオンライン・メディア「Atlantico(発音は「アトランティコ」でいいのかな)」の記事。フランス語なんで(第2外国語で習ったけど...)記事の中身はよくわからないが、「Le cliché montre les accointances soupçonnées entre la mafia japonaise et le président de la première université du pays」という副題を訳してみると、「写真は日本のマフィアと国内一流大学の理事長の疑惑の親交を示している」とでもいったところ。どんな記事かは想像がつく。で、この記事の日付は2014年11月23日。昨年の秋だから、フランスのメディアが載せた記事がスキャンダルの第一報だったのかな。それから半年も経って、日本でそれなりに報じられるようになってきた。しかも、国会の質疑を経て。
 で、「現代ビジネス」の記事で紹介されていた米国の有力オンラインメディア「デイリービースト(The Daily Beast)」を検索してみると...
The Yakuza Olympics - The Daily Beast
 タイトルは「ヤクザ・オリンピック」。ロシアのソチ五輪ではロシア・マフィアが暗躍したといわれるが、東京オリンピック2020ではヤクザでしょ、と。刺激的なタイトルだなあ。記事の日付は2月7日。「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」が「Atlantico」の後追い風だったのに対して、さすが米国のオンラインメディアの雄、単純な後追いではない。前の2つとは写真が違う。そして写っている人も違う。キャプションによると...

Hidetoshi Tanaka, Japan Olympic Committee Vice Chairman (far left) and Hareaki Fukuda, Sumiyoshi-kai Chairman (far right) taken at the New Otani Hotel in September of 1998 at a celebration of Fukuda's ascendancy to the Sumiyoshi-kai chairman position

 田中JOC副会長と一緒に写っているのは山口組ではなく、住吉会の方...。幅広い交友関係といいますか...。で、「ヤクザ・オリンピック」といわれてしまう。ブルーンバーグの配信した記事は「The Japan Times」にあったが、こちらは「デイリー・ビースト」の記事を報じたもの...
Sure winners in 2020 Tokyo Olympics? Gangsters | The Japan Times
 「2020年東京オリンピックの確実な勝者は? 暴力団」と、「ヤクザ・オリピック」を踏襲した見出し。東京オリンピック報道に「ヤクザ・オリンピック」という新しいジャンルをつくった感じ。
 JOC、どうなっているんだろう。副会長はどこから出てきたのか、と見ると...
JOC - JOCについて | 役員名簿
 田中氏は日本相撲連盟副会長なのだ。大相撲は暴力団スキャンダルで揺れて、健全化へ苦心惨憺したが、それはプロの日本相撲協会*2の話で、日本相撲連盟はアマチュア相撲団体*3なのだ。
 で、プロの日本相撲協会のサイトを見ると、「社会的責任」として、こんな宣言が...
暴力団排除宣言 - 日本相撲協会公式サイト
 プロは社会的責任を自覚して行動しなければならないが、アマチュアはどうなんだろう...。そこが協会と連盟の違いになる? この問題、JOCはどう考えているのだろう。日本的に、時間がが経てば、みんな忘れる、すべて時間が解決してくれると思っているんだろうか。それで日本は沈静化できても、2020年まで散発的に海外メディアが「ヤクザ・オリンピック」問題を報じるのだろうか。ともあれ、日大スキャンダルがオリンピック・スキャンダルへと拡大してしまった。海外メディアから見ると「日大理事長」よりも「JOC副会長」のほうがニュース価値があるし、記事が大きくなるんだなあ。でも、私大の問題と、JOCの問題とでは、日本のイメージに与える影響は相当、違うなあ。

【4月29日追記】この写真、Jake Adelsteinのスクープだった様子
 この暴力団幹部とのツーショット写真話、JOCが調査することになったらしい。
JOCが田中副会長調査へ 反社会的勢力と交際報道受け:朝日新聞デジタル
<JOC>田中副会長、反社会的勢力との関わり否定 (毎日新聞) - Yahoo!ニュース
 この写真、フランスのオンラインメディアが最初と思っていたら、このサイトに、この写真が出現するに至る経緯が出ていた。
米VICE誌「最も危険な写真 in JAPAN」山口組六代目・司忍組長と日大理事長兼日本五輪委員会副会長・田中英寿氏ツーショット公開 | ロサンゼルス発 ジャパラマガジン®
 今回の海外の報道合戦の先陣を切ったのは米国のVICEだった様子。上の「ジャパラマガジン」の記事は2014年11月19日のものだから、それ以前にVICEが載せていたことになる。VICEは日本語のサイトもあって、こちらに日本語の記事が...
ヤクザとオリンピック ー 最も危険な写真を公開 | VICE Japan | The Definitive Guide to Enlightening Information
 この段階で既に山口組住吉会も写真に登場していた。どの写真もこちらが大本となる。で、英語のオリジナルは...
This May Be the Most Dangerous - and Most Costly - Photo in Japan | VICE News
 筆者の名前は、Jake Adelstein。「デイリー・ビースト」の記事と同じジャーナリストだった。「デイリービースト」の著者紹介によると...

Jake Adelstein has been an investigative journalist in Japan since 1993. Considered one of the foremost experts on organized crime in Japan, he works as a writer and consultant in Japan and the United States. He is also an advisor to NPO Polaris Project Japan, which combats human trafficking and the exploitation of women and children in the sex trade. He is the author of Tokyo Vice: An American Reporter on the Police Beat in Japan (Vintage) and the forthcoming The Last Yakuza: A Life In The Japanese Underworld.

 スクープを放ったのは日本在住の調査報道ジャーナリストだったのだ。
 一方、以下のサイトの情報によると、この写真、10月頃から日本では出回っていたらしい。
【東京アウトローズ3行情報】 司忍6代目山口組組長と田中英寿・日大理事長「驚愕のツーショット写真」が複数の出版社に郵送: 東京アウトローズWEB速報版
 どこのメディアが書くかは、掲載することができるかどうかの問題であったのかもしれない。掲載を躊躇させた理由が、出所不明の怪文書で裏付けが取りきれなかったということだったのか、既にいくつかのメディアが書いている物理的な暴力に対する「恐怖」の問題だったのかどうかはわからない(そういえば昨年末、調査報道系の仕事をしている人物が身に危険を感じているという噂を聞いたが、それはこの話だったのだろうか)。ともあれ、日本で報道するメディアはなかった。昔だったら、「噂の真相」あたりが載せていたところだろうか。それとも「噂の真相」でも難しかったのか。結局のところ外国人ジャーナリストが海外のメディアに載せることでしか、表に出る道はなかったのだなあ。
 この問題、JOCによる真相の究明が待たれるところです――というのが紋切型の結論かな。

Tokyo Vice

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The Last Yakuza: A Life in the Japanese Underworld

The Last Yakuza: A Life in the Japanese Underworld