生誕100年 亀倉雄策展(新潟県立万代島美術館)

 東京オリンピック2020のロゴは盗作騒動で地に落ち、改めて、1964年の東京オリピックのポスターはインパクトがあったよね、ということになってくる。その東京五輪1964年のグラフィック・デザイナーが亀倉雄策であり、いま新潟市の県立万代島美術館で生誕100年回顧展をやっている。

戦後日本を代表するグラフィック・デザイナー、亀倉雄策(1915-1997 新潟県燕市出身)の生誕100年を記念した回顧展を開催します。《東京オリンピック》や《EXPO’70》など、初期から晩年にいたる代表的なポスター作品を紹介するとともに、装幀やパッケージの仕事、制作過程を知ることのできるスケッチ類、当時の資料写真や愛用の品などをあわせて展示し、その業績を振り返ります。

 亀倉雄策って新潟県の出身だったのだな。亀倉はアートディレクターとして有名な人で、本や雑誌の装丁から企業の製品のパッケージ、ポスターの製作まで様々なデザインワークをしている。その頂点となった仕事が、1964年の東京オリンピックであり、1970年の大阪万博。国家的なイベントのデザインワークで、日本の力を見せたわけ。気合が違っていたのかなあ。今のようにカネ、カネ、利権だけで、目を「¥」マークにして、ちゃちゃっと仕事をしていわけではなかったかな。もちろん当時も、利権はあっただろうし、巨額のカネが動くイベントだっただろうけど、そこに自分のアートなり、デザインなりの痕跡を残そうというクリエーターなり、アーティストとしての魂が込められていたのだろうなあ。
 1983年のヒロシマアピールズのポスターは、燃えて落ちていく蝶の群れだけだが、これもインパクトがある。その才能は、商業的な分野でだけ発揮されたわけではない。デザインの世界は時代を反映するので、もちろん今から見ると、時代を感じさせるものもがあるが、東京オリンピックなどを見ると、誰にもやっていないことをやってやろうという意志を強く感じる。そこにカメラマンやら、他のクリエーターたちの力が加わり、作品となっている。
 2020年の東京五輪のロゴは、半世紀を過ぎた後、どのように振り返られることになるのだろう。ああ、あのパクリ騒動のやつね。新国立競技場も利権の塊だったよね、とか、マイナスイメージだけだろうか。寂しいなあ。
 でも、この亀倉雄策展、僕が見に行った時は、ウイークデイだったせいか、ガラガラだった。歴史を振り返り、過去の資産を自らの中に蓄積しながら、現代、未来へと向かう姿勢が劣化しているのかなあ。お手軽に、ちゃちゃちゃっと組み合わせて、一丁上がりという時代なのか。でも、そんなものはグーグルの画像検索やらなにやらで、みんなが、ちゃちゃちゃっとググれば、「あ、これが元ネタね」とわかってしまうようなものなんだろうけど。自分の心や体の中に一度、飲み込んだ上で、その伝統の上に創作することと、いろんなスタイルを集めてテクニカルに組み合わせて使うことは、同じ系譜の似たような作品に見えたとしても、やっぱり違うんだよなあ。前者には、どこかに個性がある。
 そんなこんな、いろいろなことを考えさせる回顧展です。
★ 生誕100年 亀倉雄策新潟県万代島美術館)=> http://banbi.pref.niigata.lg.jp/exhibition/kamekurayusaku/

亀倉雄策のデザイン

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亀倉雄策 (ggg Books 世界のグラフィックデザイン)

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新装版 デザイン随想 離陸 着陸

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