西独のシュミット元首相が死去。政治家が知的でエレガントだった時代。著書だけでなく、ピアノのCDも残す

旧西ドイツ首相のヘルムート・シュミット氏が10日、死去した。96歳。独メディアが一斉に報じた。フランスのジスカールデスタン大統領と盟友関係を築き、主要国首脳会議(サミット)の創設を提唱したひとりで、欧州統合の推進に尽力した。戦後復興を終えたドイツが国際舞台に復帰する土台を作った。戦後ドイツを代表する政治家、知識人だった。

 シュミット、そしてジスカールデスタン、欧州の政治家は知的でエレガントだったなあ。この二人がいなかったら、サミットもなかっただろうし、世界の風景も違うものになっていたかも。ジスカールデスタンにはどこかエリートの傲慢さのような雰囲気があったが、シュミットはオープンで知的な感じがした。敗戦、引き裂かれた国土、東西冷戦の最前線と、背負っていたものが違ったからか。
 著書も多い。外交で実績を残した人なので、その記録を書き残している。

シュミット外交回想録〈上〉

シュミット外交回想録〈上〉

 続編も...
ドイツ人と隣人たち―続シュミット外交回想録〈上〉

ドイツ人と隣人たち―続シュミット外交回想録〈上〉

 世界の政治家たちとの対談集も
ヘルムート・シュミット対談集―回顧から新たな世紀へ

ヘルムート・シュミット対談集―回顧から新たな世紀へ

 ゴルバチョフキッシンジャーリー・クアンユーなど対談相手もすごかったし、この対談集は刺激的だった*1
 で、シュミットがすごいというか、面白いのは、趣味のクラシック・ピアノでCDまで出していること。しかも、エッシェンバッハモーツァルトの曲を。
モーツァルト:2台&3台のためのピアノ協奏曲

モーツァルト:2台&3台のためのピアノ協奏曲

 さらに恐ろしいことにバッハも...
バッハ:2台、3台、4台のピアノのための協奏曲集

バッハ:2台、3台、4台のピアノのための協奏曲集

 うーん。西洋文化の中で育った知性と教養の人。何しろ、ハーバート出身のアメリカ人に「ロシア民族がどのように行動するかを知るために、そもそもあなたはドストエフスキーを何頁読みましたか」と言った人だからなあ。欧州から見ると、米国は浅薄に見えたのかもしれない。しかし、こうした教養人が政治家のトップだった時代があったのだな。それも、理念先行の理想主義で突進するわけではなく、現実を見ながら、思考を重ね、世界を少しずつ良い方向へと進ませようとする。何だか、反知性主義の現代では、忘れ去られたタイプの政治家だなあ。
ヘルムート・シュミット - Wikipedia
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