トランプは不幸なことに、有言実行の人なのかもしれない

 米国のトランプ新大統領、選挙中の発言は当選するまでのマーケティングに基づいた手法で、実際に就任したら、良き国家の経営者になるのではないという期待があった。しかし、これまでの動きを見ていると...
トランプ大統領 TPPから離脱 大統領令に署名 | NHKニュース
トランプ氏、NAFTA見直しでカナダ・メキシコと近く協議へ | ロイター
CNN.co.jp : トランプ氏、オバマケアで大統領令に署名 撤廃への姿勢鮮明
 着々と公約を実行。そして今朝、流れていたニュースは
メキシコ国境に壁、トランプ氏が大統領令 新たに移民制限も | ロイター
 実際には既に米国とメキシコの国境にはフェンスがかなりあるらしいが、それにしても。そして、米ABCとのインタビューでは、こんな発言も

米大統領選で共和党の候補者指名を目指す実業家、ドナルド・トランプ氏は6日放送のテレビインタビューで、テロ容疑者らに対する「水責め」などの拷問を支持すると改めて表明した。トランプ氏は当初、米軍によるテロ容疑者の尋問手法をめぐり、現在禁止されている水責めなどの拷問を復活させると公約していた。

 この記事はCNNだが、テレビインタビューは米ABCのデヴィッド・ミュアーによるもの。ともあれ、ひょっとしたら、トランプって「有言実行」の人?という感じになってくる。不幸なことに...。選挙期間中には「なぜ、核兵器を使えないのか」とか言ったり、日本の核武装容認論とか語っていたけど...。核武装容認論については、日本を中国に対する米国の盾にするつもりだと解釈している人もいた。日本を米国の核の傘から出して核の盾にする考え方? 何だか不安だなあ。言葉だけじゃないかもしれないところが。
 ヒトラーは、選挙戦のときからユダヤ人の排除を叫んでいたが、一般国民も、ヒトラーを支援した財閥も、過激な発言は選挙で票をとるための戦術であり、実際に政権を握れば、現実的な政策をとると思っていた、という話を何かの本で読んだことがある。そうした歴史は教訓として、第二次大戦後、生きてきたはずなのだが、70年以上もたてば、忘れてしまうのだな。1930年代に書かれた本や戦後間もなく書かれた全体主義を分析した本をもっときちんと読んでおいたほうがいいのかもしれない。
 そういえば、こんな話も
半世紀以上も昔に出版されたジョージ・オーウェルの「1984年」がAmazonでベストセラーになった理由は? - GIGAZINE
 トランプ大統領就任式を見に来た国民の数がオバマ大統領のときよりも少なかったと報道したテレビは嘘で、トランプのほうが参加者は多かったと主張した報道官(航空写真を見ると、どう見ても少ないのだが)を弁護して、大統領顧問がテレビインタビューで「Alternative Factsを提供したまで」と発言した。「Alternative Facts」? 日本語に訳すと「代替的事実」「もう一つの事実」「別の事実」ということだろうか。「オルタナティブ・ミュージック」というのは聞いたことががあるけど、「オルタナ事実」というのもあるんだ。
 ともあれ、こんな奇妙な言葉を政権が使い始めたので、米国の人たちはオーウェルの「1984年」に登場する「ニュースピーク*1」を思い出したらしい。1948年に書かれた*2、この近未来小説では、世界を3つの超大国が支配する全体主義の監視社会を描いているのだが、これも何だかトランプが描く世界観に近いような気もしてくる。米国とロシアと中国で仕切る世界(あるいは米国とロシアが栄え、アジアは中国と日本が戦争をして消耗していく世界)。これからは、現代を理解するために、ヒトラースターリンの時代の社会、政治、経済を分析した本を読むべきなのかもしれない。そんな気分になる、今日このごろです。

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

*1:ウィキペディアの「ニュースピーク」解説 => https://goo.gl/GRymtN

*2:出版は1949年