アカデミー作品賞は「ラ・ラ・ランド」じゃなくて...「ムーンライト」。授賞式は前代未聞の大混乱

 ハリウッドはアンチ・トランプが多いけど、そのトランプが喜びそうな大混乱。

第89回アカデミー賞(Academy Awards)授賞式が26日、米ハリウッド(Hollywood)の「ドルビー・シアター(Dolby Theatre)」で開催され、注目されていたミュージカル映画ラ・ラ・ランド(La La Land)』は作品賞こそ逃したが、複数部門での受賞を果たした。作品賞の発表では、誤って『ラ・ラ・ランド』とアナウンスされ、ステージに上がったプロデューサーに賞が手渡された。しかし、その後の訂正で『ムーンライト(Moonlight)』の受賞が改めて発表された。

 中継を見ていたが、作品賞は「ラ・ラ・ランド」と発表され、スタッフ・キャストが壇上に上がり、プロデューサーが受賞挨拶を始めたが、その後ろでテレビ局のスタッフが受賞結果が入った封筒をチェックしたり、走り回っている。そして、「ラ・ラ・ランド」の作品賞受賞は間違いで、本当は「ムーンライト」だと...。プレゼンターのウォーレン・ビーティの釈明だと、作品賞の封筒を開けると、「ラ・ラ・ランドエマ・ストーン」と書いてあったのだとか。で、「ラ・ラ・ランド」と言ってしまったらしいのだが、なぜか、既に終わった主演女優賞の封筒を渡してしまっていたらしい。いずれ、もっと詳しい解説が出てくるのかもしれないが、大失態。最初の作品賞発表はフェイクだったわけで、いかにもトランプが喜びそうな展開。ハリウッドの連中はフェイクだと...。トランプは大笑いしていたりして。
 ともあれ、前代未聞。とんでもない展開で、感動がピークとなって終わるはずの授賞式が、何がなんだかわからない混乱のうちに幕を閉じた。これもまた今のアメリカを象徴している感じ。もうグジャグジャだな。まあ、それはそれとして、エマ・ストーンが主演女優賞をとったのは、うれしい限りです。「ゾンビランド」で見たとき以来、気になる女優さんでした。
【追記】受賞後のインタビューが感動的だった
 WOWOWアカデミー賞授賞式・字幕版放送のほうには最後に受賞者の記者会見の様子が収録されている。これが感動的だった。作品賞の発表ミスについて当然、記者から質問が飛ぶのだが、「ムーンライト」のスタッフ・キャストは「ラ・ラ・ランド」のスタッフ・キャストを気遣い、「ラ・ラ・ランド」で主演女優賞をとったエマ・ストーンは「ムーンライト」を賞賛する。なにかといえば相手をおとしめるトランプとは違うなあ。同じ映画コミュニティのアーティストととしての連帯感とリスペクトがある。「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス監督は、作品賞が自分たちと知ったとき、「言葉を失った」という。そして「言葉を失った」のは「ラ・ラ・ランド」の人々の「寛容さ」に対してだという。トランプでないほうの米国はいまだに強く美しい。

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