エクス・マキナ

 遅ればせながら、見ました。アカデミー賞視覚効果賞を受賞した作品で、予告編を見ただけでも映像は斬新で興味を引かれていたのだが、技術先行の小品かな、と思っていた。テクニックに過度に依存したカルト映画というか、映像技術に凝った実験的な映画かな、と。ところが、これがドラマとしても期待を上回る面白さで楽しめた。検索エンジンの巨大企業の若手プログラマーがCEOの別荘に招かれ、新たに開発した人工知能(AI)をテストする秘密の実験に1週間参加しないかと誘われる。AIは美しい女性のアンドロイドの形をしていて…。久しぶりに展開が読めなかった。美術デザインを含めて視覚効果が素晴らしく、加えて登場人物は4人なのだが、緊張感に満ちている。
 AIのエヴァ役のアリシア・ヴィキャンデルが魅力的。この映画でも、いくつもの映画賞をとっているが、この後、「リリーのすべて」でアカデミー助演女優賞をとっている。納得。もう一人、「キョウコ」というハウスメイドが出てくるのだが、この役を演じていた東洋系の人は何人かと思ったら、ソノヤ・ミズノという日系イギリス人だった。「キョウコ」という名前に合わせたキャスティングではあったのだ。モデルでバレリーナの人で、「ラ・ラ・ランド」にも出ているらしい。で、男優陣は、若手プログラマー役のドナルド・グリーソンとCEO役のオスカー・アイザックはふたりとも、この後、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」に出ている。俳優も厳選した少数精鋭の映画だったのだな。というか、この映画でステップアップしたところもあったのだろうか。
 で、筋が凝っていると思ったら、脚本・監督のアレックス・ガーランドは英国人で、この映画も米国映画かと思ったら英国映画だった。英国の映画やテレビは何だか知らないが、ハリウッドと違って単純ではない。そういえば、昔会った英国人がアメリカ人のことを「ナイーブ」と言っていたが、英国人はナイーブじゃない人たちなんだな。それがミステリーやスリラーに向いているのかもしれない。この映画もSFミステリーとでも言うべきカテゴリーだから、こうした展開になるのかもしれない。