「ラ・ラ・ランド」を観る

 いま、ミュージカルと言えば、エマ・ワトソンの「美女と野獣」なのだろうが、遅ればせながら、エマ・ストーンの「ラ・ラ・ランド」をみました。「ラ・ラ・ランド」は昨年米国で公開されたときから気になっていたのだが、ミュージカル好きの知り合いの評価が微妙だったもので、ついつい敬遠してしまっていた。でも、エマ・ストーンは以前から好きな女優さんだし、見に行ったら、これが面白かった。好き嫌いが分かれそうな映画だな、とも思ったが、映画好きとしては久々に楽しめるミュージカル映画だった。
巴里のアメリカ人 [Blu-ray] ロシュフォールの恋人たち デジタルリマスター版(2枚組) [DVD] 冒頭の渋滞する車の行列から女性が歌い出し、群舞となり、ライアン・ゴズリングエマ・ストーンが登場するまでの場面がワンシーン・ワンカットと言うか、ワンショットで撮られていることから目を奪われる。ダンスシーンは基本的に長回し。カットでごまかすこともしない。また、すでに町山智浩氏が、さまざまな映画からの引用について解説しているが、「ラ・ラ・ランド」の映像の背景に映画の伝統、名画へのリスペクトが見えてくる。個人的には「ロシュフォールの恋人たち」や「巴里のアメリカ人」を思い出した。ジャズを中心とした音楽は、ミシェル・ルグランジョージ・ガーシュウィンを想起させる。
日活100周年邦画クラシックス GREATシリーズ 東京流れ者 HDリマスター版 [DVD] 監督のデイミアン・チャゼルは20代でつくったジャズ・ドラマーを主人公とした「セッション」で評判になった。「セッション」も面白い映画だったが、音楽畑で育った知識が中心の人だろうと思っていたら、映画の知識も半端ではなかった。映画オタクの監督というと、クエンティン・タランティーノがすぐに頭に浮かぶが、チャゼルも相当なもので、来日したときには、「ラ・ラ・ランド」でオマージをささげている映画として「東京流れ者」をあげていた。あの歳で、鈴木清順の「東京流れ者」...。だいたい、取材していた記者のなかに「東京流れ者」をみていた者がどれだけいただろう。
ニューヨーク・ニューヨーク (2枚組特別編) [DVD] ワン・フロム・ザ・ハート 【2003年レストア・バージョン】 [DVD] ともあれ、ダンスシーンにしても、どうやって撮ったのか、考えてしまうし、この映画の背景に活かされている映画は何か、と考えていると、何度でも見て確かめたくなる。チャゼルは見た目、まだ学生みたいな感じだが、見た目以上に野心的。商売上の安全志向から、オリジナルが敬遠されているハリウッドで、しかもミュージカル。フランシス・コッポラは「ワン・フロム・ザ・ハート」で、マーティン・スコッセシは「ニューヨーク・ニューヨーク」で挑戦しながら失敗した分野。ストーリーは古典的な「ボーイ・ミーツ・ガール」で、ほとんどが二人の芝居。脇役をやたら配置して、リスクヘッジをするわけでもない。それで最後まで一気に見せるというのは並大抵の力ではない。使われている映画の技術は相当なものがある。
セッション コレクターズ・エディション [Blu-ray] 出版の世界では、人はだれでも1冊は傑作を書くことができるといわれる。自分の人生のなかに何か一つは大きなドラマがあり、その瞬間を書くことで傑作が生まれるというわけ。「セッション」はチャゼルがジャズのドラムをやっていたころの体験がベースになっているともいわれ、そうした一生に一回の1本かと思っていた。しかし、「ラ・ラ・ランド」を見て、評価が一変した。彼は本当に映画の天才といっていいのだろう。映画というのは何でもできる世界であり、もっと自由な表現形態であることを改めて見せてくれた。
ラブ・アゲイン [Blu-ray] 音楽もいいし、カメラはすごいし、主演のライアン・ゴズリングエマ・ストーンもいい。この映画のヒロインは最初、エマ・ワトソンで考えられていたと言うが、作品になると、エマ・ストーン以外に考えられない。ゴズリングとストーンのコンビはこれが3本目だし、「ラブ・アゲイン」ではダーティ・ダンシングしていたしなあ。このふたりは合っている。
 この映画、監督のデイミアン・チャゼル、音楽のジャスティン・ハーウィッツ、撮影のリヌス・サンドグレン、主演のライアン・ゴズリングエマ・ストーン、この5人の才能がきらめいている。どのようにして、この映画ができたのか。このところ、映画のDVD/ブルーレイを買うことはなかったが、製作場面やインタビューなどの特典映像が入っていたら、買ってしまうなあ。で、サウンドトラック版も久しぶりに買ってしまった。

Ost: La La Land

Ost: La La Land