- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2017/03/31
- メディア: 単行本
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しかし、ここで描かれる、連合赤軍リンチ殺人事件に関係し女性兵士も、第2次大戦下で非人道的に行為に関係した日本軍兵士も、どこか共通したものを感じる。「仕方がなかった」という気分が濃厚に漂う。悪に直面したときの個人の倫理のあり方というか、集団の中での個人の責任意識と言うか、これは時を経ても大差ない印象を受ける。戦前派・戦中派の偽善を厳しく批判した「全共闘世代」「戦争を知らない子どもたち」にしても、半世紀たってみれば、過去の自らの行動を直視しないというところでは変わらない。そして、いくら過去を切り離して生きようとしても、過去はどこまでも追いかけてくる。
日本人って何なのだろう。永田洋子だけに責任を押し付けるのも、どこか女性蔑視の感情が底流にある。この小説を読んでいると、いろいろなことを考えさせられる本だった。