盧武鉉・元韓国大統領をモデルにした「弁護人」

 朴槿恵大統領から文在寅大統領へ。こうした流れの背景には、この映画が大ヒットしたことに象徴される韓国の空気があったのかもしれない。その映画は...

弁護人(字幕版)

弁護人(字幕版)

 

  ソン・ガンホ主演の「弁護人」。文在寅大統領の先輩というか、師匠ともいえる盧武鉉・元大統領をモデルに、釜山の民事弁護士が、ある事件をきっかけに人権派弁護士に目覚めていく物語。大学生や社会活動家の読書会が拷問によって反政府活動に仕立て上げられた釜林事件が描かれる。

 この映画では、反共の政権側の人間にも、家族を殺されたり、朝鮮戦争時代の北朝鮮に対する怨念があるなど、それぞれの事情はあることも描くが、愛国の名のもとに手段を選ばずに、政府に批判的と思われる人を強引につぶしていけばいくほど、政権に対する不信は膨らんでいく。信無くば立たず。いくら政府が「愛国」「反北朝鮮」を叫んでも、国民はやナイーブに反応しなくなってしまう。北朝鮮危機を煽っても、国民は単純にはついてこない。

 「弁護人」はが2013年に公開され、1000万人を超える観客を集める大ヒットとなったという。ということは、2017年の朴槿恵大統領の弾劾、文在寅大統領の誕生に向けた空気が韓国社会のなかに醸成されていたのだな。朴槿恵政権が芸能界のブラックリストまでつくって、こうした映画をつくるエンターテインメントの分野に圧力をかけようとしていたのもわかる。映画には力があるから。

 映画は前半がちょっと長い気もするが、法廷モノとして楽しめる。ソン・ガンホはこうした映画の主人公に向いている。拷問を受ける大学生に「ミセン」のイム・シワン。最初は気が付かなかった。

  ソン・ガンホの映画としては、この延長線上に、光州事件を描いた「タクシー運転手」があるのだろう。文在寅大統領が、好きな俳優としてソン・ガンホを挙げている理由がわかる。リベラルなのだな。